Road Tunnels Manual

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9.2. 構造の耐火性

構造の耐火性は火災の始まりから構造の変形や崩壊により,その機能を維持できなくなるまでの経過時間によって特徴付けることが出来る。

技術レポート2007 05.16.B道路トンネルにおける火災と制御の為のシステムと機器”の第7章"耐火構造の設計基準" に、トンネルを耐火性構造とする目的を以下のようにまとめている。

  1. トンネル内部にいる人々が自力で避難(自己救助)又は安全な場所に移動することができる(主目的)。
  2. 安全な条件下で救助活動が可能である。
  3. トンネル構造の崩壊や第三者の財産の損失を防ぐ対策を講じる。

補足の目的として、火災後の修復のための交通制限期間を短くする。

このテ-マの概要は、技術レポート1999 05.05.Bの第VII章.4"構造の耐火性”“トンネル内の火災と煙の制御” に記載されている。

構造物の耐火性は、異なる時間-温度曲線との関係で説明される。ISO834曲線、オランダRWS曲線、ドイツZTV曲線、とEurocode 1 Part2-2 の基本的な炭化(HC)曲線の温度に1100 分の1300の係数を乗じたフランス増加 炭化水素曲線(HCinc)を図9.2-1に示す。

図9.2-1:ISO、HCinc 、ZTV、RWSの時間-温度曲線(Routes/Roads No. 324)

 "PIARC道路トンネル構造耐火設計基準" (2004年)“のthe Routes/Roads の記事でも紹介しているように、トンネル内での耐火設計基準は世界道路協会(PIARC)及び国際トンネル協会(International Tunnelling Association) の間で合意されている。そして、技術レポート2007 05.16.Bの第7章"構造の耐火基準”(PIARC勧告)として発刊されている。

提案の概要は表9.2‐2に示している。

表 9.2-2: PIARC と ITA 提言
交通方式 主要構造物 二次構造物 (4)
  沈埋トンネル上部構造の下部/内部 不安定地盤中のトンネル 安定地盤中のトンネル 開削トンネル  換気口(5) 避難通路出口(外気側) 避難通路出口(他トンネル側) 避難所(6)
乗用車 ISO
60 分
ISO
60 分
ノート(2)参照 ノート(2)参照 ISO
60 分
ISO
30 分
ISO
60 分
ISO
60 分
貨物車両 RWS/HCinc
120 分(1)
RWS/HCinc
120 分(1)
ノート(3)参照 ノート(3)参照 ISO
120 分
ISO
30 分
RWS/HCinc
120 分
RWS/HCinc
120 分(7)

ノート

(1) 可燃物資を運ぶ大型トラックの交通密度が多い場合は180分必要となることがある。

(2) 安全性の基準値はない。また、崩壊を避けるため以外の耐火性を必要としていない。その他の目的を考慮すると以下の要件が必要になることがある。

  • ほとんどの場合、ISO 60分となる。
  • 火災後の修復コストや修復工事期間の不便を考慮すると、構造的保護を付加することが高価になる場合はそれを(防音用カバーなど)を付けない。

(3) 安全基準値はない。また、進行性崩壊を避けるため以外の耐火性を必要としていない。その他の目的を考慮すると以下の要件が必要になることがある。

  • 構造物の特性(例えばトンネルが建物の下に建設されている)或いは道路網に大きな影響を及ぼすことを考慮すると強力な保護が必要な場合はRWS/HC 120分。
  • これにより物的損害を比較的安価で抑えることが出来る場合は、ほとんどの場合ISO120分。
  • 火災後の修復コストや修復工事期間の不便を考慮すると、構造的保護を付加することが高価になる場合はそれを(防音用カバーなど)付けない。

(4) その他二次構造物:プロジェクトごとに定義する必要がある。

(5) 横流換気の場合。

(6) 避難所は外気が入るようにする必要がある。

(7) 可燃物を輸送する大型トラックが多く、避難所から避難するのに120分以上かかる場合は時間の延長を考慮する必要がある。

崩壊がどのような影響を及ぼすかによっては耐火性の要件が異なる。影響はトンネルのタイプによって違う。沈埋トンネルの場合、一部の崩壊によりトンネル全体が浸水する恐れがあるが、開削トンネルは影響が限定的のことがある。基本的な必要条件は進行性崩壊を防止し、重要な縦断システム、つまり電力供給や通信ケーブルが切断されないことである。

トンネル構造に使用している材料は火から守るため、それぞれ違った注意が必要である。レポート1999 05.05.B “トンネル内の火災と煙の制御”のVII節.3”材料の火災反応“で岩トンネルのライン二ング 対 鉄筋コンクリートの特徴を説明している。大火災時に発生する強烈な熱により鉄筋コンクリートはその支持機能を失う可能性がある。断熱材などで保護することによって構造が早い段階で損傷することを防ぐことが出来る。工事全体(補強/プレストレスの種類や深さ、追加の保護など)としての耐火性は考える必要がある。

コンクリートの剥離は温度と膨張の違いによっておこる。補強材が容易に高温に接することになり悪影響が及ぶ可能性がある。避難するユーザーにとっては通常危険はないが、消防士などに危険が及ぶ可能性がある。さまざまな耐火性を取り入れることによってコンクリート剥離のリスクと影響を抑えることが出来る。しかし、火災では高温になるため完全に剥離を防ぐことはできない。

換気システムの耐火性は注意して設計し、故障などで設計性能が損なわれないよう考慮しなければならない。火災時にダクト付近でトンネルが崩壊する影響を検討する必要がある。

避難通路は閉じ込められた人々の脱出のため火災の第一段階でのみ使用する。避難通路が使用できる時間は最低でも30分必要である。避難経路を救助隊、消防士が使用する場合はより長い間使用できるようにすることが必要な場合もある。

火災が隣接するトンネルや避難路に広がらないよう、緊急扉、緊急避難凹部やその他二本のトンネル間にある設備はある一定時間火災に耐えられなくてはならない。枠組みも含めた緊急扉全体および緊急扉周りの構造は最低でも30分間火にさらされても耐えられる必要がある。二つのトンネルの間にある扉の場合はより長い時間、1時間から2時間は必要だ。

Reference sources

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