Road Tunnels Manual
オペレーターが道路利用者と通信できることは重要である。この通信は双方向(オペレーターから道路利用者、そして、道路利用者からオペレーター)で可能であることが望まれる。これらの情報のやり取りは、全ての運用状況下(通常、縮退、緊急)において可能であることが望ましい。
このような通信機能を確保している機器は多々ある(警報は通信の特定の形態として考えられる)。これらの機器は、全て同じ機能を提供している訳ではない:道路利用者からオペレーターへ伝達することを確保するもの(非常押しボタン、特定の避難システム使用中の自動警報)もあれば、一方、他の機器はオペレーターから道路利用者に対して伝達するもの(FM周波数帯を利用した放送、拡声放送)である。一部分の機器のみ(非常電話)は双方の情報伝達が可能である。
非常電話は、トンネル内で事故を起こした道路利用者がそのトンネルを所掌している管制室に連絡をすることができる。さらに、非常電話と連動させることで、非常電話を使用することにより道路利用者の場所を特定することが可能である。
これらの非常電話は、電話ボックスの中、若しくは、緊急ステーションに一定の間隔で設置されている。非常電話の設置間隔は基準により定められているため、国により様々である。
非常電話の構造は、非常にシンプルである。トンネル内の非常電話は、トンネルからの呼び出しを受信する受信センターへ接続されている。受信センターは通常、トンネル管制室に位置し、時にはトンネルを管轄する警察の構内に設置されている。
非常押しボタンは、トンネル内で事故が発生した場合、交通管制センターへアラームを通知することができるものである。価格がそれほど高いものではないため、短い間隔で設置することが可能である。
非常押しボタンは、一定の範囲において、非常電話と重複すること、そして、さらに、道路利用者と管制センター間での双方向通信ができないため、使用頻度はあまり多くない。
上記で述べたように、道路利用者はトンネル内で様々な装置(特に緊急時には、非常電話や、時には非常押しボタン)を利用することができる。また、トンネル内には、消火設備や、多くの場合、非常口などもある。
道路利用者がこれらの装置を操作したときは、オペレーターが適切な行動を実行するため、可能な限り早急に通知されることが必要である。非常電話や非常押しボタンが設置されている場合、通常、管制室にて電話や非常情報を受信するため、これは、難しいことではない。非常電話を管制室以外の場所で受信する場合は、即座に管制室へ非常電話を受信したことを知らせるための運用手順を予め決めておく必要がある。
消火器や非常口の場合、センサーは状態変化の検出のため設置され、そして、SCADA(遠方監視制御)システムを利用することにより管制室との通信を図っている。これにより、オペレーターは、トンネル内の道路利用者が支援を求めていることが通知される。
消火器の場合、箱から消火器を取り出した、もしくは設置している緊急ステーションのドアを開けたことが通知される。非常口の場合、扉を開けたこと、または、非常口内に避難していることのどちらか若しくは両者が感知される。
トンネルが映像監視システム(交通監視制御システム参照)を装備している場合、トンネルとその周辺からの画像は管制室のモニタに表示される。オペレーターにとって、数時間の間、注意力を持続しながら複数のモニタを同時に監視することは困難である。
このような状況を是正するため、事象検出のための自動検出システムを使用するオペレーターが増えつつある。特定のトンネルに対して、システムの設置を義務付けている国もある。
自動事象検出(Automatic incident detection:AID)は、通常、トンネル内の交通流を表示するカメラから生成される映像ストリームのコンピュータによる解析に基づいている。多くのアルゴリズムは、以下に示すような事象の範囲を検出することができる。
深刻な車両火災は、通常、(事故などに伴い)車両が停止してから拡大する。車両停止に伴うAIDシステムからの警報は、温度や煙感知器のような、他のシステムに起因する警告よりも先行することが期待される。このAIDによる早期警報は、オペレーターが事象の位置や状態の確認、および、効果的な介入をする時間をもたらすことができる。この早期警報により、換気制御、二次災害の防止、事象の上流に存在する道路利用者への迅速な警報など、最適な運用方法の選択を可能とする。また、緊急隊の要請、通行規制、可変情報板やラジオによるメッセージ提供、レッカー車の呼び出し、トンネルからの避難誘導などを実施するための時間を確保することができる。
映像による煙感知システムは、 レポート05.16.B 2006の6.3.3節"現状使用される方法"に記載されている。
ビデオベースのAIDシステムは、交通流、交通量および速度のリアルタイム情報を提供することができる。このシステムは、事象を当初から録画することができ、監視制御およびデータ収集(SCADA)システムのような他のシステムと連動することが可能である。ビデオベースAIDシステムは通常、1台若しくは複数のカメラからの映像を処理するビデオイメージ処理部、インターネットプロトコル(IP)ビデオエンコーダおよびIPデコーダから構成され、モニタやコンピュータディスプレイに映像を表示する。さらに、ビデオおよび他の機能(ビデオ映像およびAID事象の録画、リアルタイム交通データを収集および蓄積、トンネルSCADAシステムのインターフェース)、ネットワーク装置および通信線路(光ファイバー、同軸およびシールドなしツィストペアケーブル)、一つ若しくは二つの冗長サーバ、映像管理システムにより構成される。
トンネル内のAIDシステムに関する設計では、以下の点に留意すべきである。
Route/Roads記事(2009) "道路トンネルにおける火災検知システム-国際研究プロジェクトから習得した知識" は、「多くのメーカーの見地として、障害物の対処に関し、検知器はトンネル内の両方向からのように異なった角度から同じ領域をカバーする2つの検知器を推奨する」と結論付けている。複数のカメラも、故障の場合を考慮し、冗長化の目的のために必要となる場合がある。典型的な映像分野の見地として、いずれかのカメラが故障した場合でも、隣接するカメラ映像により補完されるようオーバーラップするよう設計される。
レポート05.15.B 2004のIV節.2.1. “交通事故検出装置" は、自動事象検出にカメラを使用している場合、カメラ設置間隔は30~150メートル程度になると述べている。
AIDシステムのパフォーマンスの性能は、導入前の広範囲にわたる試験と調整の程度にかかっている。トンネルへの導入に関する過去の経験では、試運転と調整には数ヶ月を要することを示している。
火災/煙検知器は、通常、センサー、発報装置、伝送ケーブル、判定ユニット等により制御ループが構成され、それらを総括して一般的に火災警報システムと呼ばれる。
道路トンネルにおける火災および煙検知システムは、非常用設備の起動に遅延がないよう、可能な限り迅速に火災や煙成分を検知するように設計されている。主な目的は以下のとおりである。
火災検知の原理は、基本的に火災特有の現象を感知することに基づいている。例えば、熱、煙、輻射、そして典型的な化学物質の発生などである。従って、火災検知センサーは以下のように分類できる。
これらの検知器それぞれには、応答時間、堅牢性、信頼性などそれぞれの適用特性がある。
最近のビデオAIDシステムは、火災の検出が非常に効率的かつ高速であることが証明されている。つまり、通常想定されている交通流に一致しない任意の物体や車両といった事象を検出する。カメラは、事象の映像へ自動的に切り替わる、これにより、オペレーターは火災発生を非常に初期の段階にて発見することができる。
火災/煙検知システムは、レポート2006 05.16.B の6.3節"火災検知" にて述べられている。
一般的な方法では、道路トンネル内での火災検知は、次に示すような環境条件下でも耐え得るように設計されるべきである:最大風速10m/s、ディーゼル車排気ガスおよびタイヤと路面から生じる磨耗(粉塵)に起因する視認性低下、汚染物質(一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物)の増加および濃度変動、変化するヘッドライトの強度、エンジンの熱および車両排気ガスの熱い蒸気、電磁干渉、トンネル断面の遮蔽に影響を与える混在車両交通(例:自家用車、小型貨物、大型貨物、バス、トレーラー)。
システムは「程度の高いフェールセーフ運用を持たなければならない」、また、「可能な限り火点位置を特定しなければならない」といったようなことは十分強調されていない。従って、 誤発報を避けるような一定レベルの学習能力を保有することが火災検知システムには望まれる。なぜならば、誤発報は、それを是正するために多大な労力を必要とし、更に悪いことには、オペレーターが警報に注意を払う気を失わせるかもしれない。
さらに、火災検知/アラームの設置が廉価であること、低い運用コスト、および、保守が容易であることが不可欠である: レポート2006 05.16.B の6.3節"火災検知"参照。
自動火災検知器のためのパラメータは、国内および国際的な法令および規格により規定され、以下のようなものである:火災を検出するための最大時間、火災発生位置の決定、検出される最小火炎荷重、認可された検出方法、火災警報の設置点、自動火災警報装置が設置されるべきトンネルの詳細(例:トンネル長、機械換気を有するトンネル、人員により恒常的に監視されていないトンネル、特に交通密度の高い距離が短いトンネル)。
火災検知器のパラメータに関する詳細な参照資料のリストは、レポート2006 05.16.Bの10節"参考文献"に記述されている。
火災検知器の効率は、デバイスの種類(温度、光ビーム減衰、イオン化、等)だけでなく、検出方法、センサーの数およびトンネル内での監視レベルに基づいている。
自動事象検出、AIDシステムを含むビデオ画像解析、CCTV監視、消火器の取外しにより警報が発報する設備は、非常電話と同様、一般的に警報を発するための良い手段である。
使用される多くの検知器は、熱および温度上昇率に基づいている。このタイプは、反応速度が遅い場合が多いが、校正が適切に行われている場合、誤報は殆どない。煙の遮蔽に基づく感知器は、早期に信号を上げることができるが、ディーゼル車からの排気のため、より多くの誤発報が発生する: レポート05.05.B 1999のVI節.3.1"火災検知" 参照 。
Route/Roads記事(2009) "道路トンネルにおける火災検知システム-国際研究プロジェクトから習得した知識" は、道路トンネルの火災/煙システムについて、熱の線形検出、火炎の光学的検出、ビデオ映像による検出、吸引空気サンプリング方式による周期的な熱および煙感知について述べている。吸引空気サンプリング方式は、誤発報、維持管理および火災検知を総合的に勘案した場合、応答時間と場所の正確さに関する能力、そして火災のモニターと道路環境の影響に対して良好な性能が得られると結論づけている。この研究から得られた情報は、トンネル火災検知のための最適な技術を決定するために使うことができる。
トンネルは閉鎖かつ制限のある空間であるため、トンネル外の放送局からの電波の伝播を行うことが難しい。この伝播を再確立するため、必要な周波数を再送信するための装置を設置する必要がある。下記に示すような数種類のサービスが再送信される。
再送信することが可能な周波数のサービス数は非常に多数あるが、コストおよび実現性の問題から、それらの全てがカバーされるものではない。原則として、救助隊、オペレーターにて使用される周波数、いくつかのFMおよび(または)DABの周波数、そして、携帯電話事業者の周波数が再送信されているのを見受けることができる。
1つまたは複数の無線周波数が再送信される場合、事前録音したメッセージを挿入できるよう装置が設置されている。必要に応じ、前述のラジオ放送は中断され、そして、トンネルに関するメッセージが道路利用者への注意のために放送される。これにより、道路利用者に対してオペレーターの指示に従うための手順に関する案内を提供することができる。
トンネル内ラジオ再放送設備は基本的に下記にて構成されている。
道路利用者へ直接的に情報を提供、若しくは、特定の手法で行動を要請することができる装置はあまり存在しない。この問題を解消するため、拡声放送設備を設置しているトンネルがある。実際には、使用方法に応じて、拡声放送は様々な機能を提供する。特に以下の点を挙げることができる。
しかしながら、現状のところ拡声放送装置は広く使用されていない。使用に当たっては、ケースごとに検討する必要があり、特定のトンネル(非常に高密度の交通量、トンネル長、等)に拡声放送装置は適する。