Road Tunnels Manual - World Road Association (PIARC)
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1. 戦略的課題

トンネルは,そもそもは障害部(通常は山岳地域)を越えることを目的とするものであったが,近年では換気等の複雑な設備や運用方法も加わり,一層複雑なものになってきている.実際の運用においては,多岐にわたる項目を取り扱うとともに,高度な管理シナリオに対応できるよう,制御・監視することが求められている.

図1.0:ゴットハルドトンネルの火災

図1.0:ゴットハルドトンネルの火災

1999年と2001年に発生したモンブラントンネル,タウエルントンネル,ゴットハルドトンネルでの火災事故の後,総合的な安全性に関して多面的に評価するよう要求が高まっている.その結果,設計段階から規制条件に対してさらなる統合が行われており,該当する土木技術や特定のトンネル設備に重大な影響を及ぼしている.

トンネルは,一般に建設においても運用においてもコストが高額でリスクのある構造物と考えられている.このことは,いくつかの国にとって,初めて道路トンネルや鉄道トンネルを建設することに対して消極的となる原因となっている.このような問題を解決するため,建設および運用に要するコストの削減,(主として建設時)リスク管理,運用時の事故や火災を最小限に抑制すること,設計・施工・運用の各段階でのトンネル設備を最適化することが必要不可欠である.現在のトンネル建設に関して調達や融資を考えると,リスクとコストのコントロールについては改善されてきており,「コンセッション方式」,「デザインビルド」,「PPP」といったモデルで実践されるようになってきている.

本マニュアルの戦略的課題の章では,以下のことを目的とする.

  • トンネルが「複雑なシステム」で構成されていることについて読者に理解してもらう.
  • 設備の「機能」の定義が上流側(設計)と下流側(運用)の両面から重要であることを強調する.
  • 事業を成功させるには,トンネルの所有者の周囲に技術と豊富な経験をもつ多分野にわたる技能が必要であることについて,所有者に理解してもらう.
  • トンネルが基本的に快適で安全な状態で使用されるように設計され,継続的で信頼性の高い維持管理を行うことがオペレーターの主題であることを,読者に理解してもらう.トンネルという概念には,これらの安全性や運用の目的や制約事項が考慮されるべきである.
  • 最後に,設備自体は所有者が解決すべき問題の一部でしかないことと,所有者の権限が及ばないかもしれない規制,介入,安全サービス,手続き等といった外部的な要素についても同時に取り入れていく必要がある場合が非常に多いことを読者に理解してもらう.

この章は設計用のハンドブックとなることを目的として記載されているものではない.すなわち,トンネルの所有者が取るべきアクションに関して詳細なハンドブックとなることや,設計者が行う技術的な対策を詳述すること,また,オペレーターがトンネルの安全性や快適性を確保するために行うべきことを示すことを目的としていない.この章の唯一の目的は,この複雑な分野における読者の取り組みや理解の一助となり,可能であればトンネルの運用において起こり得る多くの誤ちを防ぎ,その最適化の可能性を理解するために,読者に特定の問題意識を持たせることである.

トンネルは複雑なシステムであるでは,トンネルが「複雑なシステム」であることを示すとともに,土木・換気・安全分野における様々な項目の主要な関連性を列挙する.

トンネル設計一般(新設トンネル)では,トンネルを設計するときに考慮すべき主要な項目を示す.

修復-既設トンネルの更新では,運用中の既設トンネルにおける補修や改築について述べる.

"トンネルの一生"における段階では,建設サイクルやライフサイクルにおける様々な段階を分析し,それぞれの段階で鍵となる取り組みを明示する.

建設,運用,改良に係るコスト – 資金的側面では,建設・運用・改修に係るコストに関する問題点と,資金の調達方法に特有な利害関係について説明する.

規制-推奨事項では,世界各国で発行されている主な法令や指針,勧告を列挙する.

複雑な地下道路ネットワーク では,複雑なトンネルの事例と,多くのノモグラフを示す.

貢献者

この文書は,フランスの道路トンネル運用委員会の代表者であり,ワーキンググループ5のメンバーでもあるBernard Falconnat(France)により編纂され,ワーキンググループ5によりフランス語から英語に翻訳されたものである.フランス語で書かれた原著は,Dider Lacroix(France)とWilly De Lathauwe(Belgium – ITA 委員会の代表者)により修正された. 英語版はLucy Rew (France)とFathi Tarada (UK)によって校閲されている.

日本語版は,砂金伸治((国研)土木研究所),日下敦((国研)土木研究所)淡路動太((国研)土木研究所),河田皓介((国研)土木研究所)が翻訳,真下英人(国土技術政策総合研究所)が校閲,日下敦((国研)土木研究所)が変換作業を担当した.

1.1 トンネルは複雑なシステムである

  • 1.1.1. システムの複雑さ
  • 1.1.2. サブセット「土木工学」
  • 1.1.3. サブセット「換気」
  • 1.1.4. サブセット「運用設備」
  • 1.1.5. サブセット「安全」
  • 1.1.6. 統合

1.1.1 システムの複雑さ

トンネルは非常に多くのパラメータが相互に作用する結果として「複雑なシステム」を構成している.これらのパラメータはサブセットにより集約されている.そのうち主要なものを図1.1-1に示す.

これらのパラメータは全て,各サブセット内やサブセット間において,変動したり相互に作用したりしている.

パラメータや特性の相対的な重みは各トンネルの特徴によって異なる.例えば,

  • 決定基準とパラメータの重みは,都市トンネルと山岳トンネルでは同じではない.
  • パラメータはトンネルの延長や,危険物輸送車両が通行するのか旅客車両しか通行しないのかによって異なる.
  • トンネルを新設するのか,改築するのか,安全に関する新しい基準に適合させるために改良するのかによって判断基準が異なる.

図1.1-1:複雑なトンネルシステムを構成する主な要素

図1.1-1:複雑なトンネルシステムを構成する主な要素

注1:関連性は複合的で,しばしば可逆的でもある.トンネルの一般的な概念と機能的内空断面は図の中心に配置されている.他の要因を図の中心に配置することで同様の図を描くことができる.

注2:最初の円は「技術分野」を表す.いくつかの分野は複合的な側面を示す.

  • 安全性:規制 - リスクアナリシス - 介入手段 - 供給能力の要件
  • 地質学:地質学 - 地質工学 - 構造寸法
  • 土木業務:工法 - 工程 - リスクと災害
  • 運用:運用および維持管理(技術面)
  • コスト:建設 - 運用 - 日常の維持管理 - 大規模改修
  • 環境:規制 - 診断 - 影響評価 - 対策と軽減

注3:2番目の円は,プロジェクトが発展する「背景」を示す.一部の要素は複合的な面を持つ.

  • 人間環境:感度 - 都市化 - 建築物やインフラの存在
  • 自然環境:感度 - 水 - 動物 - 植物 - 大気環境 - 景観
  • 輸送特性:交通の特性や量 - 類型学 - 貨物の種類 - その他
  • 様々な外的制約:アクセスおよび特定の制約 - 気象条件 - 雪崩 - 地山の安定性 - 社会経済的状況 - その他
  • 収益レベル:経済的受容性 - 予算の上限 - 資金調達コストの制御 - コンセッション方式や官民パートナーシップ(PPP)の場合の一般的な経済的・政治的背景

新しいトンネル(または古いトンネルの改修および更新)の設計は,これら多数のパラメータを考慮する必要がある.これらのパラメータが関与する意志決定ツリーは複雑であり,経験豊富な多分野にわたる専門家の関与が必要である.これらの関与は以下の理由により出来るだけ早い段階から行われる必要がある.

  • プロジェクト開始から,関連する全てのパラメータを考慮することができる.また,進行中のプロジェクトや直近に完成したプロジェクトから明らかとなった陥りやすい多くの過失を避けることができる.過失は,運用と安全の確保に必要となる機器への配慮が遅れることや,リスクアナリシスの結果や緊急時の行動計画・運用手順を組み込むことなく監視体制を構築するといったことが挙げられる.結果的にトンネル自体の運用や監視のために設置したシステムや設備が,安全面や信頼性のある運用面から不適切になる可能性がある.
  • 早期の介入は,安全性の全体像や建設コストや運用コストの面からもプロジェクトのよりよい最適化に繋がる.最近の事例によると,プロジェクトの早い段階で行われた横断的な最適化(土木工学-換気-安全性評価)が約20%のコスト縮減に貢献したことを示している例もある.

各トンネルは他に同一のものが存在しない個別のものであるということができ,固有の条件を全て考慮した上で,個別に分析を行う必要がある.この分析は,以下のことを実施することが適切な解を導く上で重要である.

  • 技術的,資金的な面でのプロジェクトの最適化
  • 技術的,資金的,環境的なリスクの低減
  • トンネル利用者への必要な安全水準の保証

問題解決のための「魔法の鍵」は存在せず,単なる「コピー&ペースト」もほぼ不適切である.

 トンネルの設計とその最適化を行うには,以下が必要となる.

  • 全てのパラメータを網羅した詳細な一覧表,
  • パラメータ間の相互作用の分析
  • 各パラメータの柔軟性の評価や,必要に応じて要求される目的に関するそれらの敏感度の評価
  • 事業を成功させるための総合的なアプローチ,その理由として:
    •  「システム」が複雑すぎて解が唯一とはならないので,純粋な数学的なアプローチは不可能である
    • プロジェクトの早い段階では詳細が不明,または,確定できないパラメータの数が多すぎるにもかかわらず,本質的な選択が必要である
    • リスクとその重大性,発生確率の評価を考慮する必要がある
    • 多くのパラメータは相互に依存しており,多くの相互作用が循環している

以降では,事例の紹介を通じて,複雑さ,双方向性,相互作用的かつ「循環的」な分析特性を明らかにする.

ここで示す事例は,全てを網羅したものではなく,読者に問題点を理解してもらうとともに,例示したトンネルに議論を集中させることを目的としている.

1.1.2 サブセット「土木工学」

1.1.2.1 パラメータ

表1.1-2は,土木工学に関連する主要なパラメータを例示したものである.

表1.1-2:土木工学に関する主なパラメータ

  • 1番目の列は,パラメータの大分類を示したものである.
  • 2番目の列は,大分類に関連するサブセットを示したものである.
  • 3番目の列は,サブセットに関連する要素を,網羅的ではないが,いくつか示したものである.
  • 4番目の列は,大分類あるいはサブセットごとに,サブセットに関する主な結果を示したものである.

1.1.2.2 パラメータ間の相互作用

パラメータ間の相互作用は多数あり,重複しながら循環型にリンクされている場合が多い.

表1.1-3は,換気,断面,安全性の相互作用に関連する例を示したものである.

  • 1番目の列は,換気に関連したもので,ここで列挙されているパラメータは上記の表1.1-2のサブセット「換気」から得られた要素的なパラメータである.
  • 2番目の列は,断面に関連したもので,表1.1-2から得られたものである.
  • 3番目の 列は,安全性に関連したものである.

表1.1-3:パラメータの相互作用

この図は,いくつかの列で共通のパラメータを一定数示したものであり(接続された線を参照),サブセット間での循環した相互作用を形成している.

これらの相互作用は複雑な機能でリンクされており,純粋な数学解を求めるのはほぼ不可能である.この問題を解決するには,数多くのパラメータ間の階層を定義することが必要であり,その後,高位の階層を占めるパラメータに対しての仮定を設けることになる.この階層はプロジェクトごとに異なる.例えば,

  • 一方通行の短いトンネルや普通の延長のトンネルの場合,最も可能性の高い換気方式は「縦流換気方式」である.天端に固定されたジェットファンは,確かに通常は断面形状にはほとんど影響を与えないので,換気の設計をする前に,他の決定的なパラメータを考慮して当初は断面の図面が作成される.断面における換気の影響は,その後チェックされる.
  • 逆に,長大トンネルや,開削による矩形断面トンネルでは,換気システムとそれに付随するもの(可能なダクトの断面,数,性質,必要に応じてジェットファンの寸法等)が断面寸法に重大な影響を及ぼす.この換気システムは,初期段階では断面形状に仮定を設けながら,予備的に設計する必要がある.断面寸法はその後チェックされる.

従って解決のプロセスは,前例が示すように,相互作用的で,最初に行った仮定に基づくものになる.これは,要求されるサービスレベルや安全レベルに応じて,プロジェクトに関連する項目を考慮し,一連の繰り返し作業により優れた目標設定を行い,プロジェクトが最適化されていることを保証しながらのプロセスであるので,横断的で多分野的な技術者の豊富な経験を必要とする.

1.1.3 サブセット「換気」

表1.1-4は,換気に関する主要なパラメータを示したものである.ただしこの表は網羅的なものではない.

「土木工学」の場合はパラメータ間の相互作用は非常に多い.これらも循環型の関係を有する傾向にある.

問題解決のプロセスは「土木工学」で示したものに類似している.

表1.1-4:換気に影響を与える主なパラメータ

1.1.4. サブセット「運用設備」

運用設備は,以下のものを除き,内空断面の定義において基本的なパラメータとはならない.

  • 箱抜きやケーブル用スリーブ,消火システム用の給水管
  • 信号,情報や安全性,規制を表示する看板.信号は時に(開削で矩形断面とした場合に)断面形状(車道と信号下端の距離.縦断線形やトンネルの長さに影響を与える場合もある)に多大な影響を及ぼす可能性がある.結果的に,より全体的な最適化が必要となる場合があり,坑口に近いトンネル外のインターチェンジの位置や設計にも影響を及ぼす場合がある.

一方で,「運用設備」は,坑口部での技術的な建築物や,地下管理用のサブステーション,地下にある技術的に必要な空間,そして様々な備蓄,休憩場所といったものの寸法にとって重要なパラメータとなる.これらは多くの場合,温度や空調に関する特別の配慮を必要とする.

また,これらは,建設,運用,維持管理のコストの観点からも重要なパラメータである.

「運用設備」は,トンネルの安全性に関して重要なパラメータを構成しており,以下の意義に沿って設計,設置,維持管理しなければならない.

  • 供給能力と信頼性.特に給電と配電,通信ネットワーク
  • 全ての設備の火災に対する防護.特に主電源ケーブルと通信ネットワークケーブル
  • 設備と部品の耐久性.寿命や信頼性,運用コストや維持管理コストの最適化を保証する必要がある.
  • 維持管理作業を容易にすること.交通への影響を少なくするとともに維持管理チームや利用者の安全性に及ぼす影響を少なくする必要があり,設計やこれらの設備へのアクセスしやすさに関して特定の配慮が必要となる.
  • 運用方法の統合.監視・制御システムの設計における緊急時の対応計画,人と機械をつなぐ人間工学,オペレーターへの支援(特に緊急時)が必要である.

1.1.5. サブセット「安全」

1.1.5.1. 「安全」の概念

 図1.1-5:安全性に影響を与える要因

図1.1-5:安全性に影響を与える要因

トンネルの安全性の状態は,第2章に示すように多くの要因に関連する.安全を確保するためには,運用,介入,車両や利用者と同様にインフラ自体が形成するシステムの全側面を考慮する必要がある(図1.1-5).

インフラは建設コストにおける重要なパラメータである.しかし,以下に関して基本的な対策が同時に考慮されていなければ,インフラに多大な投資を行うこととなる場合がある.

  • 組織,人的・物的手段,運用と介入の手続き
  • 運用職員の訓練
  • 効率的な機材と職員の訓練をともなった緊急サービスの充実
  • 利用者とのコミュニケーション

1.1.5.2. パラメータがトンネルプロジェクトに及ぼす影響とは?

安全性に関連するこれらのパラメータは,多かれ少なかれトンネルプロジェクトに重要な影響を及ぼす.以下の表にいくつかの例を示す.

注:以下の4つの表は,図1.1-5に対応した4つの主要な分野に言及しているものである.

  • 1列目は,主なインフラや関係する行動を示したものである.
  • 2列目と3列目は,トンネルプロジェクトにおける影響の度合い(土木-換気-運用および安全設備)を示したものである.
    • 緑:重要または重大な影響
    • 黄:中程度の影響
    • 赤:影響なし
  • 4列目は,影響に関する主な理由や原因を示したものである.

図1.1-6:インフラに起因するプロジェクトへ主な影響
インフラ 重要度 コメント
避難ルート   トンネルの中 - 避難坑 - 避難口 - 避難連絡坑
緊急チームのアクセス   他のトンネル - 専用通路 - 避難通路と共用
避難できる人数   避難通路の大きさ - トンネルに通じる空間
換気   換気の考え方 - 特定の運用や交通状況における縦流換気方式の不備
図1.1-7:介入条件と運用組織に起因するプロジェクトへの主な影響
運用組織 重要度 コメント
対応計画   情報伝達 - 監視・制御 - 利用者との連絡
介入救助チーム   坑口施設の規模 - 可能な地下設備 - 特定の対策 - 貯水槽の規模
チームの訓練   特定の外部の設備 - 特殊なソフトウェア
図1.1-8:車両に起因するプロジェクトへの主な影響
車両 重要度 コメント
平均交通量とピーク時間   車線数 - 換気の考え方と規模
積載物   換気の影響 - 有害物質が漏出した場合の除去 - 消防隊が車列を誘導する場合の運用手順 --> 駐車施設/職員
車両の状態   特定の場合において,トンネル進入前に車両寸法やオーバーヒートの確認 --> 温度管理体制,駐車場,職員
特定の車種の排除   小型車両専用の都市トンネルの実例 - トンネルの寸法,換気,避難通路
図1.1-9:トンネル利用者に起因するプロジェクトへの主な影響
トンネル利用者 重要度 コメント
情報提供   進入前におけるリーフレットの配布 - テレビを使ったキャンペーン
「生の」情報伝達   情報伝達,可変情報表示装置,ラジオ放送,信号,断面への影響,管理・評価,制御,場合によっては遠隔操作による進入制限
教育   ヨーロッパの数カ国における自動車教習所
避難通路への誘導   誘導表示 - 手すり - フラッシュライト - 音 - 評価・管理・制御への影響
速度制限 - 車間距離   レーダーと距離検知機 - 管理・評価・制御への影響
 

1.1.6. 統合

トンネルは「複雑なシステム」である.特に,

  • 線形のみ,地質のみ,土木工学のみの観点からトンネルの設計を行うと致命的な設計上の欠陥をもたらす.それはトンネルの安全性を低下させる傾向(危険な場合すらある)があり,運用を困難にする(時として合理的な条件下での運用を不可能にする).
  • 同様に,リスクや安全性,介入,運用に関する上流の分析を取りまとめることなしに,運用設備のみの観点からトンネルの設計を行うことも,供用開始後すぐに露見するような欠陥をもたらす.
  • 運用や維持管理に関する全ての目的や制約事項を予備設計の段階から考慮しないと,必然的に運用コストが増加するとともに全体的な信頼性が低下する.

残念ながら,様々な設計関係者に十分な「トンネル文化」が欠如していることから,問題に対する場当たり的な対応が頻繁に行われている.

この複雑なシステムを制御するのは困難であるが,以下を行うためには不可欠なものである.

  • それぞれの問題に対して適切な解決策を見つける.
  • 利用者に基本的なレベルの安全性を確保し,高品質で快適なサービスを提供する.

と同時に,機能を早期に明確に定義したり,VE手続きを経たりしながら,この複雑なシステムをコントロールすることで,プロジェクトを技術的・経済的に最適化することに繋がることがほとんどである.

プロジェクトの開始時点から,以下に関する主要な問題を考慮することで,この複雑な方程式を解くための効果的なアプローチができるようになる.

  • 平面および縦断線形,地質,土木工事の手続き,工法
  • 換気
  • 安全性(リスクと危険に関する予備分析と緊急時の予備的な計画による)
  • 運用と維持管理の状態

1.2.  トンネル設計一般(新設トンネル)

  • 1.2.1 平面線形と縦断線形
  • 1.2.2 トンネル断面の諸元
  • 1.2.3 安全性と運用
  • 1.2.4 施設の運用について

1.2節では,新設トンネルの設計について説明する.供用中のトンネルの改修および安全性向上に関する設計は 修復-既設トンネルの更新 で述べられている.

1.2.1 平面線形と縦断線形

トンネルを含む道路や高速道路区間における平面および縦断線形の設計は,新設トンネル建設​における主要かつ基本となる第一段階に相当するが,これに必要な留意事項はほとんど示されていない.

トンネル建設における「複雑なシステム」は,一般の線形設計の早い段階から考慮する必要があるが,それはほとんど行われていない.しかし,この段階で技術的かつ経済的に最適な設計を行っておくことが最も重要となる.

そのためには設計の早い段階から,トンネルでは必然的である不完全な事前情報に対しても,プロジェクトのすべての潜在的な問題を認識することが可能な,非常に経験豊富な専門家と設計者で構成された学際的なチームを構成することが不可欠である.この種のチームが構成できれば,重要な選択肢に対して適切で信頼性のある意思決定を行うことができ,徐々に追加されてくる情報を考慮に入れながら,これらの不確定要素を関連づけていくことができる.

このセクションの目的は,トンネル線形の設計に関する基準を定めることではなく(いくつかの国の設計便覧については規制-推奨事項 で言及する),包括的で学際的なアプローチの必要性,およびプロジェクトの成功に最も重要である本質的な経験の重要性を所有者および設計者に示すことにある.

1.2.1.1 “トンネル文化”を持たない国々

これらの国の所有者および設計者は,トンネルに対してある種の不安を抱いている.そのため,活動的な地すべり地帯を通過するために,急勾配な線形や巨大な擁壁,非常に長い高架橋,時には様々なものが複合された工事(これらは非常に高価であり,長期間にわたる場合は効果的であるとは限らない)が計画された尾根沿いの“アクロバティックな道路線形”を好むことが頻繁に見られる.

大局的視野に立った系統的なアプローチにより設計された線形のバリエーションとトンネルを含む多くのプロジェクト事例においては,機械的にトンネルの建設を排除したアプローチと比較すると以下の特徴を有する.

  • 山岳地域では建設費の抑制効果は, 10%から25%の間に達することがある.
  • 主要な維持管理コストの節約が実現可能である.不安定または活動的な地すべりのゾーンや厳しい気象条件のような特定の条件下においても,ルートの信頼性を向上させることができる.
  • 環境負荷は大きく軽減される.
  • 特に冬季(降雪対象国の)において尾根沿いのルートで必要となる勾配が減少することによりユーザーに対するサービスレベルが向上し,管理環境の信頼性が向上する.

外部評価者による支援により,トンネル文化の不足や欠如を緩和し,大幅にプロジェクトを改善することが可能となる.

1.2.1.2 トンネルの建設と管理における伝統を持つ国々

「複雑なシステム」の概念は,上流側までほとんど統一されておらず,大局に立ったプロジェクトの最適化を実施する際の弊害となっている.制約条件全体の中でトンネルという要素を組み込むことをほとんど行うことがないため,配置計画の専門家による新しいインフラ構築における線形が固定化されてしまっていることがあまりにも多い.

しかしながら,この段階から上記1.1節で説明したすべてのパラメータとの相互作用を考慮することが不可欠である.特に,

  • その地域における地質一般や水文地質(利用可能なレベルの知見において)と同様に,工法やコスト,工期に関する地質学的な難易度および潜在リスクの事前評価
  • トンネル坑口とアクセス道路に沿った地域の潜在的な地質工学,水文地質学および水界地理学的な条件
  • 顕著な降雪を受ける国々における冬季条件下のリスクや危険性,特に,
    • 雪崩や吹き溜まりの形成,およびこれらのリスクに対するアクセス道路とトンネル坑口の防護性
    • 著しい降雪に対してルートの安全性を保証するためのアクセス道路の整備状況.この項目はトンネル坑口の標高,アクセス道路の最急勾配を条件としており,また,必要があればトンネル坑口周辺でチェーン着脱に利用できるスペース
  • トンネル坑口とアクセス道路の環境条件.その影響は都市環境に重要となる(特にノイズや汚染空気の排出),都市間のトンネルでも同様である.
  • アプローチランプの勾配:
    • 最も安価なトンネルは常に最短のトンネルになるとはかぎらない.
    • 遅い車のための特別レーンによる制限はトンネル坑口近辺では管理することが困難であり,トンネルの中でこのようなレーンを確保することは一般的には非常に高価になる.
    • アクセス道路の勾配は,交通量と冬季の信頼性に関する道路の通行能力に対して非常に強い影響を与える可能性がある.
  • トンネル側部からの(換気坑,避難通路,工程短縮用の作業坑としての)水平坑道,もしくは(換気用,避難通路としての)立坑,斜坑を設置する可能性
    • これら特殊なアクセス坑に関する設置場所,地表への影響(特に土地利用の可否,汚染排気に対する過敏さ等の都市環境において),および一年を通した利用の可否(例えば雪崩に対する露出度)が,平面及び縦断線形の設計における重要な制約条件となる.逆にそれらは非常に多くの場合,建設および運営コストの最適化に資することになる.
    • これら特殊なアクセス坑の設置場所は建設・運営費,および断面積の大きさ(換気および避難設備の最適化に関連)に対して大きな影響を及ぼす可能性がある.
  • 施工方法は平面および縦断線形の設計に大きな影響を与える.例えば:
    • トンネル掘削によって河川を横断する方法は沈埋トンネルによる方法とでは本質的に違うプロジェクトである.
    • トンネルと高架橋の接合部,
    • 過度に強制された工期設定はトンネルのレイアウトに対して特に両坑口からの掘削にとどまらず,作業坑によるトンネル中間部からの掘削を考慮しなければならないなど,直接的に影響を持つ可能性がある,
  • トンネルのレイアウトと縦断方向の幾何学的特性によって次の要素を統合することも必要となってくる:
    • 勾配の制限は換気施設の規模およびトンネルの交通容量の減少に対して大きな影響をもっている,
    • 建設および供用中の地下排水の水理条件は縦断線形に影響を与える,
    • 制限幅の縮小(トンネルの拡幅は非常に高額)は視認性に関する個別の分析と平面線形における曲率半径の選択時に特別な配慮を必要とさせる,
    • 車道からの集水および排水システムに対して重大な影響をあたえる横断勾配の変化,およびトンネル断面の寸法の増大につながるケーブル設置のためのスリーブや消火活動のための送水管の干渉を避けるように最適な曲率半径を選択する必要がある.
  • 特に都市環境における地下空間の占有に関するすべての通常の制約:地下鉄-駐車場-基礎-沈下に対して影響がある構造物
  • 建設および運営費:
    • 最も安価なトンネルが必ずしも最短のトンネルにならない.
    • トンネルの耐用年数全体でみた場合,土木工学的な追加投資は建設費,運用費,維持管理費,重大な修理費(特に換気設備)の削減,もしくは交通容量が飽和する時(トンネルとそのアクセス道の勾配の影響)を数年先延ばしすることが可能ならば,より経済的となる.
  • トンネルにおける平面線形と縦断線形の調整はユーザーの快適性と安全性レベルを確保するために慎重に検討しなければならない.縦断線形における勾配変化,特に高い位置における視覚的効果はトンネルの限られた視野および照明によって強調される.
  • 特に通行方向が一方か対面かの運用条件は,レイアウト設計の上で考慮される必要がある.
    • 可視性と視認性における通常の条件
    • トンネル側部への(水平坑による)水平アクセスもしくは(立坑による)鉛直アクセスの配置可能性,特に換気と断面の最適化,安全性の向上(本線と並行する高価なトンネルの建設を避けることによって利用者の避難通路と緊急隊のアクセス性を確保)のために検討が必要である.
  • トンネル坑口周辺のレイアウト:
    • トンネル坑口は交通の移行部分の中で特殊な場所であり,人間の行動や心理学的な条件を考慮する必要がある.利用者が本能的に自らの進行方向を維持できるように幾何学的な連続性を維持することが必要である.
    • 特にトンネル出口のアプローチでは長距離に渡る出口部照明の設置の必要性が高まる可能性があり直線的なトンネルは望ましくない.
  • トンネル坑口に非常に近い分岐・合流部:
    • トンネルの坑内・坑外にかかわらず,トンネル坑口近傍に分岐・合流部を設置することは避けるべきである.
    • 仮に避けられない場合は,あらゆる状況下における安全性の確保のために,考慮すべきすべての制約条件と特定事象(レイアウト,トンネル断面,出口もしくは合流レーン,後方の交通の流れへのリスク,避難通路,換気,照明,その他)を決定するための詳細な分析を行う必要がある.

1.2.2 トンネル断面の諸元

1.2.2.1 着目点

トンネル断面の諸元の検討はトンネル線形を選択した後の,第二段階として重要な設計段階に相当する.第一段階(トンネル線形)では経験豊富な学際的なチームによってできる限り上流段階から,非常に注意深い方法により「複雑なシステム」を考慮したアプローチを行う必要がある.この場合,トンネルは複雑なシステムであるで述べられているすべてのパラメータおよびインターフェイスを考慮する必要がある.

第二段階(トンネル断面諸元)は,第一段階(トンネル線形)と独立しているわけではなく,第一段階の検討結果を考慮する必要があるのは明らかである.二つの設計段階は相互依存し,非常に密接に関係がある.

また,上記の1.1.2.2項で述べたように,最初の二つの設計段階は反復して相互に影響を及ぼす過程となる.「複雑なシステム」の分析に対して,唯一の解を導く直接的な数学的アプローチは存在しない.また,解の一意性は存在せず,非常に限られた良い答えと,非常に多く見られる悪い答えがあるだけである.良い解であることを迅速に識別するためには学際的なチームの経験が不可欠である.

1.2.1項で引用された例はトンネル断面諸元の規定が平面および縦断線形に大きな影響を持つ可能性があることを示している.

これまでの経験からトンネル断面諸元の分析は,非常に多くの場合は不完全であり,土木工学における単独の仮定によって制限されてしまうことが示されている.これらは必然的に以下のことを導くことになる:

  • 最良のケースは,機能,運用,そして財務の観点において最適化がなされていないプロジェクトである.これまでの経験から,最適化の潜在余力が例外的な場合で建設コストの20%に達するものも示されている.
  • 最も頻繁にみられるケースは,機能や制約条件,そしてプロジェクトへの影響を不適切に考慮している場合である.これらの機能については次の設計段階において時間を要し,しばしば非常に高価な解法により実施されなければならなくなる.
  • 最悪のケースは建設費や運用費と同様にトンネルの運用および安全性において取り返しのつかない恒久的な影響を及ぼすような根本的な設計ミスである.

1.2.2.2 主要規定

"トンネル断面の諸元"における主なパラメータは次のとおりである:

  • 交通量-交通の性質-運用組織-都市部か非都市部のトンネルであるのかは次の項目の決定に必要なパラメータである:
    • 交通量とトンネルに進入する車両の種類に応じたレーン数と幅
    • (車両の種類に応じた)天端余裕高さ,
    • 例えば一方通行か対面通行か,もしくは故障発生率等の交通量や運用方法に応じた路側帯,緊急停止車線もしくは非常駐車帯
    • 対面通行の場合の中央分離帯とその幅の設置可能性
  • 換気は次に示す項目に対して大きな影響を持つ:
    • 選択された換気形式,また,それ自体が多くのパラメータに依存している(換気参照)
    • 軸流ファン,ジェットファン,二次ダクト,および他のすべての換気施設の設置に必要な空間
  • 利用者の避難通路と緊急救助チームのアクセス通路,これらは運用および安全性に関連する施設に詳述されているが,非常に多くの要素に依存している
  • トンネルの延長と勾配.これらのパラメータは換気や,アクセスと安全性に対する考え方に対して間接的に影響を及ぼしている
  • 運用のためのネットワークや設備は,その数や必要なスペース,トンネル運用上の安全性を保証するために根本な保護性能,そして,歩行者用通路や路側帯の下などの比較的限られたスペースなど,トンネル内空断面の寸法に対して決定的な要素となる場合がある.次に示すネットワークは特に寸法上の影響が大きいものである:
    • 分離もしくは結合された汚水設備(群),それらは道路および関連したサイフォンからの汚染水を収集している.線形条件(1.2.1.2を参照)に関連した横断勾配に変動が無い場合にはトンネル断面の諸元の最適化は単純化することができる.
    • 必要に応じて凍結対策が施された,消火活動や消火栓といった水供給ネットワーク
    • 高・中・低電圧幹線を含むすべてのケーブルネットワーク.それらはトンネルの開放のタイミングや火災時に対する防護が必要,併せてトンネル自体の一部もしくは全体の改修にも必要な項目である.また一方ではトンネル供用期間中に不可欠となる他のネットワークの追加に対しても必要な項目である.
    • 短~中期の間にトンネル内を通過させる可能性が高い外部ネットワークのような特定のニーズ
    • 一部に対して(技術的または法的に)必要な空間と各ネットワーク間の相互作用
    • 運用に必要なすべての信号機器:レーン信号,様々な情報を伝達するパネル,規制表示,安全表示,行き先表示などの信号と標識
  • 局所的に計画された機能的なインターフェース:地下変電所,地下換気所,安全帯,避難所等.この項目は運用や維持管理のための項目であり,特に維持管理作業や作業チームの安全のための待避所等の建設を考慮する必要がある.
  • 施工方法や地質条件はトンネル断面の諸元に(土木構造物の寸法とは独立して)影響を与える,例えば:
    • 水底下の横断については上記の1.2.1.2項で述べた.沈埋工法による解決方法では換気施設,避難通路や緊急隊のアクセス等の設計と配置について掘削によって建設されるトンネルの施設配置とは全く異なったものとなる.
    • TBM(トンネルボーリングマシン)により掘削されたトンネルでは道路下のスペースを例えば換気,利用者の避難通路,もしくは緊急隊のアクセス通路として使用することができる.この方法はトンネルが透水性の高い地質で地下水位下に位置する場合においては,(連絡通路や平行通路等が省略できるといった)最適化を実施することが可能となる.

1.2.3 安全性と運用

1.2.3.1 一般規定

運用における規定と同様に,安全性の研究,運用および非常時の組織などについてまとめた「安全性と運用」という分野におけるPIARCの勧告は多数存在している.読者にはこのテーマに関して以下の章を参照するものとして示しておく:(安全性 と トンネル安全に係る人為的な要因 )

ここでは主に「複雑なシステム」の中における安全性と運用の関連性について扱う.上記1.1.5.2項の表はプロジェクトにおける様々なサブセットを比較して各パラメータの相互依存の程度を示したものである.

ある特定の多くのパラメータがプロジェクトの上流段階から大きな影響を与えている.これらは設計の最初の段階から分析する必要があり,特に以下のパラメータに着目する必要がある:

  • 交通量 - 交通の性質(都市,非都市部) - 車の性質(一つの車種に特化したトンネルの可能性) - 危険物の輸送があるかどうか
  • 利用者の避難と緊急隊のアクセス
  • 換気
  • 利用者と管理者の通信手段

これらのトンネル設計における主要なパラメータは「危険性の分析」や「緊急隊の進入方法」の計画においても本質的な要素でもある.その理由として「緊急時対応計画」の事前分析に関連する「事前リスク分析」は予備設計の初期段階で実施することが不可欠であると考えられるためである.この分析により,満足される必要のあるトンネル固有の仕様,機能,そして安全性についてより良い形で記述することが可能となる.これによりバリューエンジニアリング的な分析や,より良い設計,さらに,技術的および財務的な改善と最適化に対して資することにもなる.

これらのパラメータとその影響度については,以下の段落で詳しく説明を行う.

1.2.3.2 交通とその特性に関するパラメータ

これらのパラメータは主にトンネル断面諸元(1.2.2を参照)に影響を与え,次に示すような一部のレイアウトに対しても影響を与える:

  • 交通量は車線数,換気および避難方法に影響を及ぼす.また,停車帯の有無や待避所そして修理のための特別組織の必要性など,停車時の故障車両とその管理方法に対しても影響を及ぼす.
  • 車両の種類やその分布形態などの交通特性は,避難する人々の量に応じて避難の考え方(連絡通路や避難通路,およびそれらの寸法と設置間隔)に影響を及ぼす.
  • 特定の種類の車両に特化したトンネルは,車線幅,内空高さおよび換気などに関係する.
  • 危険物輸送車両が通過するか否かは,換気施設,トンネル断面,貯水および排水対策,迂回ルート,トンネル坑口部の環境,もしくは排気用煙突,大規模火災発生時の構造物の保護に対して,避難時の緊急隊組織および特殊な手段と材料を保有する消防隊に関する基準に対して影響を及ぼす.

1.2.3.3 利用者の避難-緊急隊のアクセス

これは機能的な基準と一般的な設計に関する基本的なパラメータである.また,このパラメータはしばしば線形(直接外部へ通じる出口)と連絡通路‐地下通路‐平行通路‐通路に通じるシェルターや一次避難場所の建設基準にも影響を及ぼす.

その分析は換気設計(特に火災時の換気),交通量,リスク分析,緊急時対応計画の立案(特に換気と救助シナリオの調査),そして建設方法に関する統合的なアプローチが必要となる.

機能的な観点から,健常者と障がい者の移動を確保するためのルート,幾何学的特性および空間を決めることが必要となる.

これらの施設には均一性,視認性に加え,心地よく,かつ心落ち着かせる特徴を確保することが不可欠である.これらの施設は(事故や火災で)ストレスのかかる状況下にある人々によって,(緊急隊が到着する前の)1次的な自己避難の段階で使用されるものである.これらの使用はストレスによってパニックに陥ることを避けるために,自然かつ単純で,効率的な心を落ち着かせる特徴を持っていなければならない.

1.2.3.4 換気

純粋な“縦流換気”方式で設計された換気施設では “トンネル内空断面”もしくは“線形”にはほとんど影響を及ぼさない.

このことは,排煙ダクトを装備した“縦流換気”方式, “横流換気”方式, “半横流”もしくは“半縦流”換気方式,組合せ換気方式,もしくはトンネル坑口以外からの吸排気用の立坑もしくは中間横坑を含む換気方式に対しては当てはまらない.これらすべての設備は“内空断面”, “線形”およびすべての付加された地下構造物に対して重要な影響を及ぼす.

交通空間内の換気施設は基本的に以下に示す目的に応じて設計されている:

  • 国の規制勧告で要求されるよりも低いレベルで濃度を維持するために汚染空気を希釈し,トンネル内で健康上問題の無い環境を提供すること
  • トンネル内の火災発生時に効率的な排煙システムを提供することに,交通空間の外に避難するまで,利用者の安全を確保すること

換気設備には以下の追加的な機能が設けられることがある.

  • 改善された汚染空気の拡散,またはトンネル外への排出前に空気の洗浄を行うことにより,トンネル坑口での大気汚染の抑制
  • トンネル内で汚染空気を再利用するための空気洗浄用の地下施設.これらの施設は都市部のトンネルや非都市部の長大トンネル内に設置されている.これらは大きなスペースと多大なメンテナンスが必要となる複雑で高額な技術である
  • 火災時において熱の影響による構造物の劣化を低減するためにトンネル内の温度抑制に資する場合

換気施設は交通空間の換気のみを考慮しているわけではない.以下についても考慮されている:

  • トンネル間をつなぐ連絡坑
  • 避難坑や火災時に利用者によって使用される避難所
  • トンネル内もしくはトンネル坑口近傍の外部に位置する空気の更新もしくは温度レベルの管理や制御(地理的条件に応じた加熱または空調)に必要な技術室や設備群

換気設備の設計に必要な事項は以下の通りである:

  • 直面している多くの条件と性能に対して,ダイナミックかつ迅速な方法で適応できること:
    • 直面している多くの条件と性能に対して,ダイナミックかつ迅速な方法で適応できること:
    • 火災時の煙に対する変動可能な動作速度,特に火災の発達時と衰退時だけでなく,火災の全時間を通じて避難,消火,構造物保全等の各段階において消火活動戦略の展開に適合が可能
  • 交通条件の変化(量および性質),汚染物質の許容値の低下,そして様々な運用上の条件に対してトンネルのライフサイクル全体に適応できるようにするために現時点における施設の十分な余力

1.2.3.5 - 利用者とのコミュニケーション-監視

利用者とのコミュニケーションは情報伝達を行うことにより「トンネル断面諸元」に重要な影響を持つ.

他の主要な影響因子については,「複雑なシステム」の全体とは関連しない.それらは特に遠隔監視,検知,通信,交通管理,制御,監視に加えて避難組織などの運用設備に関するサブシステムに関連する.

1.2.3.6 - 運用における個別要求事項

トンネルの運用と維持管理チームの作業に対しては特別な準備が必要な場合がある.その理由は十分な安全性を確保した下での作業が可能となるように,また,交通の制限を減らす目的のためである.

特別な準備としては,例えば,定期点検作業,交換部品やメンテナンス部品(特に重量物や取扱いづらい材料)の運搬が容易になるように,地下施設群の前面に待避所を設置することなどが挙げられる.

1.2.4 施設の運用について

この項の目的は,運用する施設や設備の概要やその機能,設計に関する記述を行うものではない.これらの内容は最新の「道路トンネルマニュアル」もしくは1.6以降に記載されているハンドブックや国の提言にて示されている.

この項では,所有者と設計者に対して,トンネルを運用するうえで必要な特定の設備や施設固有の問題に対する注意事項を記載している.

1.2.4.1 戦略の選択

利用者のトンネル通行時に適切な快適性と安全性を提供するといった2つの使命が満足されるとともに,交通流を確保するために,運用している施設によってトンネルの機能が満足されるようにする必要がある.

その施設は地理的な位置や固有の特性,交通の性質,トンネル前後の道路構造,安全にかかわる重要な問題,緊急時の組織に加え,トンネルが存在する国の法律と文化的および社会経済的環境に適している必要がある.

過剰な施設の設置がトンネルの安全で快適なサービスレベルの向上に資することには必ずしもならない.過剰な施設の設置により,維持管理の増加と人為的な介入が必要となり,それらが実行されなければ,安全性レベルとトンネルの信頼性の低下につながる可能性がある.それらの施設は並列して,または,乱雑に設置しても効果がない.それらの施設は(安全性における重要な機能を)補完したり,時には冗長的なものとして整備される必要があり,全体として一貫して形成される必要がある.

運用施設は"生きて"いる:

  • 運用施設は再現性を保有し,技術レベルに適した厳密な修繕および維持管理体制を必要とする.維持管理にはコストを要し,トンネルが使用され続ける限り,熟練した人材と財政投資が必要となる.維持管理の不足(または不十分な維持管理)は施設の欠陥,機能不全につながり,その結果としてトンネルの機能と利用者への安全性に関して問題となる.供用中の施設の維持管理は限定されており困難な状況が多い.施設の設計段階からその配置について考慮する必要がある.その理由としてシステムの"建築"に対しては,トンネルの使用性と安全性に対する機能障害の影響,および維持管理の実施,もしくは施設の改修における影響を抑えるために設計と配置が入念に考慮される必要がある.
  • それら施設の"寿命"は一定ではなく,施設の特徴やその使用法,置かれている条件に加え,組織や維持管理の体制によっても10年から30年程度の範囲で変わりうる.したがって定期的な交換が必須であり,結果として十分な資金が必要となる,
  • 技術の進展により施設の更新,場合によっては先進的な技術を含むものとする必要がある.その理由として技術の陳腐化や交換部品が入手困難となることがある.
  • トンネル自体やその周辺環境が進化していることを考慮していくうえで,施設には適応力が備わっていることを示す必要がある.

戦略的な選択を行うために考慮されるべき主な事項は以下のとおりである.

  • 単に装置を設置することが望ましいという発想ではなく,トンネルに対して真に必要となる施設を定義すること.バリューエンジニアリングを組み合わせたリスクアナリシスは合理的に必要な施設を選択することが可能になる強力な手法である.この手法ではシステムの複雑さを組み込むことが可能であり,同時に,この複雑さが厳格で権限を持つ組織によって管理されなければ,遅延,機能障害,費用増大をもたらすことがある.
  • 交通供用下で維持管理を実施する困難さや必要となる維持管理とその頻度を削減するため,施設の品質や耐久性の向上を優先すること.これは,より高い投資コストが発生する可能性があるが,運用期間中にわたってほぼ補償される.
  • 設計,製造,工場受入れ時の試験,現地での設置時の試験運用といった各段階において,その施設の品質や性能を確認すること.これまでの経験によれば,厳格な組織体系と効果的な規制が行われていないため,多くの施設が不十分であり,その目的を満足していない.
  • 施設が直面するであろう気象や環境条件,社会文化的条件(一部の国における維持管理に関する考え方の欠如)や技術的条件に加え,同様に運用における組織体制などに適合した技術を選択すること
  • 施設の設計や設備の選択において,運用費用や特定のエネルギー費用を考慮すること.これらの費用は,トンネルが存在する限り発生する.換気施設と照明施設は,一般的にエネルギー消費が高い施設である.予備設計の段階からこの点について留意されるべきである.
  • 設計と資金調達の分析の準備段階から考慮すべき事項:
    • 設置の必要性や運用や介入を行うチームの組織,学習や訓練を行う一方で,清掃や維持管理への配慮
    • 交通状況下における維持管理上の制約,運用の成果,維持管理・補修費
  • 新設トンネルプロジェクトの一般的な組織化とスケジューリングを考慮する必要がある.すべての施設とシステムについて,それらを実行するためのチームの募集と訓練,および外部介入者(特に緊急隊-消防隊)とともに,トンネルの特殊性に慣れさせるための練習と予行演習を兼ねたリハーサルによって操作を行う時間の確保が(2~3ヵ月の期間)が義務づけられる.

1.2.4.2 -主要な施設に関する提言

1.2.4.2.a エネルギー - 動力源 - 配電

トンネルの設備が機能するためには電源が必要である.大規模なトンネルにおいては,常に現地で確保できるとは限らない数MW規模の電力が必要となることがありうる.既存のネットワークを強化し,信頼性を向上させる,もしくは新たなネットワークを想像するためには設計の初期の段階から必要な準備を行わなければならない.電力供給は,トンネルの運用や建設に不可欠である.

電気エネルギーの供給およびトンネル内における配電に関しては以下の規定が必要である.

  • 必要容量
  • 安定供給
  • 信頼性,冗長性を有し,保護されたエネルギーの流通システム:流通ネットワークの冗長性と相互接続性-平行に接続された変圧器-火災抵抗性を有する鞘やマンホール内にあるケーブル

すべてのトンネルは固有のものであり,緊急隊の介入等の条件と同様に,その地理的な位置特性,既存の電気ネットワーク,電源供給条件(優先されるまたは優先されない),増加または消滅の可能性のある電源,既存の公衆ネットワークの信頼性,そのトンネル特有のリスクに応じて,固有の分析を行う必要がある.

すべてのトンネルは固有のものであり,緊急隊の介入等の条件と同様に,その地理的な位置特性,既存の電気ネットワーク,電源供給条件(優先されるまたは優先されない),増加または消滅の可能性のある電源,既存の公衆ネットワークの信頼性,そのトンネル特有のリスクに応じて,固有の分析を行う必要がある.

電源供給が停止した場合の安全に関する項目は以下のとおりである.

  • (トンネルや避難条件に応じて)概ね30分間,以下のすべての安全装置を停止させない非常用電源の供給:
    • 最小限の照明レベル-信号- CCTVによる監視-通信-データの伝送とリモート監視・制御システム-センサーと様々な検知器(汚染-火災-事故など)
    • 非常駐車帯や避難経路,避難所への電力供給
    • この機能はエネルギーをすぐに供給できるように,通常,UPSシステムやディーゼル発電機によって確保される.
  • たとえば都市部もしくは地方部にトンネルがあるか,リスクの発生はトンネルによってさまざまに異なっていることから,停電の全期間において特殊な手順が準備されている限りにおいて,MOC(最小運用条件)の付加的な対象は以下の設備の電力供給を確保するために決定されうる.たとえば,換気システムの(発電機または部分的な外部電源による)非常用電源は軽車両の火災時はその通行を許可するが,トラック火災では一時的にその通過を禁止する.

通常電力供給用に準備されているものは以下のとおりである:

  • 公共電源から非常電源供給がある場合:
    • 高または中程度の電圧をもつネットワークの独立セグメントへの接続可能な公共ネットワーク網から2から3程度の供給源を有する.機器の一部の電力供給の中断や外部非常電源の供給が不十分な場合など,トンネル内の変電所において必要に応じて,"通常電源"と"非常電源"の間で自動的に切り替えが可能
    • ディーゼル発電機ではない
    • UPS非常用電源の設置
  • 外部からの非常電源供給がない場合:
    • 公共ネットワークから単一の外部電源
    • ディーゼル発電機は主な外部電源が遮断された場合に電力の一部を供給することができ,最小運用条件と特定の運用手順が確立
    • UPS非常用電源の設置
  • 電源が完全独立の場合 ― 利用可能な外部電源が無い場合:
    • 公共ネットワークは必要な電力を供給することができない,もしくは必要な信頼性を確保していない.トンネルはその場合完全に独立している.エネルギーが同時に作動するディーゼル発電機により完全に供給される.発電機の1つに障害が発生した場合に備えて予備の発電機が"バックアップ"として設置されている,
    • もし発電機の信頼性レベルが不十分,または安全上の理由で問題であると考えられる場合は,UPS非常用電源の設置が可能.

1.2.4.2.b 換気

この分野におけるPIARCの推奨事項は多数あり,換気施設の概念と設計に対して本質的で国際的な言及を行っている.読者は上述の1.2.3.4に加えて,換気を参照するのがよい.

しかし,たとえ換気施設がトンネル利用者の健康と快適性,安全性を保証するために不可欠な施設の1つを構成するとしても,利用者やオペレーター,緊急救助隊がとる行動,専門知識,行動能力によって最も重要な要素を占めていることに留意すべきである.

換気施設が単独では,特に空気清浄と環境保護に関して,すべてのシナリオを取り扱うことはできず,また仮定されたすべての機能を満足することも不可能である.

換気システムの選択とその規模の関連性の把握にあたっては,長年の経験に加え,火災の連続的な進展や熱伝搬や熱交換,有毒ガスや煙の伝搬に関連した閉鎖環境内における流体力学の複雑な現象を理解する必要がある.

換気施設は一般にエネルギーを消費するものであり,それらの規模の最適化と例えばエキスパートシステムの使用による運用に対して留意されるべきものである.

換気施設は非常に複雑である場合がある.ストレス下にあるオペレーターよりも一層効率的に状況を把握し管理するための自動システムの導入が,火災時における適切なマネジメントとして必要となる場合がある.

上記の1.2.3.4に示されているように換気施設は常時の運用下で健康と衛生に対する必要条件および火災時の安全性における目標を満足できる必要がある.

エネルギー消費の耐久性,信頼性,適応性,長寿化および最適化は,換気施設が満足しなければならない主要な品質基準を構成している.

1.2.4.2.c 換気施設への追加機器

以下に示す換気施設のための2種類の追加機器は,利害関係者や住民関係者,ロビー活動において要求されがちな内容である.

  • 換気もしくは空気清浄施設
  • 固定された消火システム

A. 空気清浄施設

外気の品質に関するトンネルの影響でこの問題を扱っており,読者はそれを参照できる.

空気清浄施設の導入は都市部の居住者を保護する団体からたびたび要求されるものである.これらの施設は通常地下に設置され,建設に加え運用および維持に多額のコストを要する.加えてそれらは非常にエネルギー消費が高い.

車両からの重要な排出の削減と,トンネル内の大量の空気に含まれている非常に低い濃度の汚染物質を処理するシステムにおける難しさがあり,その結果は納得できるものとはなっていない.そのため過去10年間に設置された多くのシステムはほぼ稼働していない.

将来的には空気清浄設備は,発生源において汚染物質の一層の削減を課す強制的な規制があるような国では非常に不確定なものになる.

B. 固定消火システム(FFSS)

固定消火システムでこの問題を扱っており,読者はそれを参照できる.

その技術は膨大で多様な基準に応えている:消火活動-火災の抑制-火災現場近くにいる利用者のための熱放射および温度の低下-高温によるトンネル構造の損傷に対する保護等

これらのシステムがもし火災発生時から作動していた場合,肯定的な面もあるのかもしれないが,特に視認性の条件の悪化に関連して否定的な効果を示す.FFSSの使用は換気や避難の戦略と同様に利用者の安全性のあらゆる側面に対して一貫したアプローチが必要である.

このようなシステムの導入に関する決定は複雑で,重要な結果をもたらす.それは関連する作業の安全性に関する特定の条件と,システムの導入によって得られる付加的な価値に関する反応を受けうる.それはその時代の流行や圧力の影響を受けるべきではない.

FFSSはその信頼性が保証されている間に定期的で頻度のある点検といった重要な保全対策の実施を必要とする.

1.2.4.2.d 照明

CIE(国際照明委員会)の提言は彼らが提示する照明のレベルが高く,PIARCにおいて議論があるところである.読者はCIEの提言を含むいくつかの手法を示した欧州標準化委員会が発行する技術レポートを参照するように勧められている.

照明は,トンネル利用者の快適性と安全性を確保するための基本的なツールである.照明レベルの目標はトンネルの地理的な位置(都市またはそれ以外)やその特徴(短期または長期),交通量と交通の性質に適合させなければならない.

照明機器は多くの電力を消費し,その機能と性能を最適化するための開発が進行している.

1.2.4.2.e データの転送-管理- SCADA

SCADAはトンネルの"神経系"と"頭脳"であり,情報の編集,伝達,処理,その後機器の取扱説明の伝達を許可するものとなっている.

このシステムはトンネル内の特定の状況,施設,組織構成と運用方法,トンネルの設置によるリスクの背景に加え,介入開始のための準備と手順に対して明確な分析を必要とする.

監視とコントロールセンターの組織は,トンネル(またはトンネル群)の特定の背景,必要な人的物的手段,想定される課題,自動装置による基本的な補助,もしくは事故発生時のオペレーターへのエキスパートシステムに対して,オペレーター業務の削減と単純化,効率化が図れるように,慎重に分析される必要がある.

これらのシステムの詳細設計は長期で詳しいものであり,また,現場のすべてのシステムを統合した後に,全体の制御および試験を通じた一連の段階(特に工場出荷時のテスト中)において,開発および制御に関する正確な方法論が必要となる.経験によればこれらのシステムにおいて発生する多数のエラーは次の要因によるものである.

  • 定義された仕様の未熟さ,不十分な機能分析,または動作条件および手順に関する知識不足
  • 詳細分析のための必要時間,システムの横断的統合,またはトンネルの運用にあたって特有の条件を考慮できないほどのシステム開発の遅延
  • 全てのシステムの開発,試験,制御,統合に関する厳密さの不足
  • 人間の行動と一般的な人間工学を考慮することの欠如
  • 重大事故発生時の意思決定の論理的順序と集約された意思決定の階層構造という観点でのトンネルの運用に関する経験不足

マニュアルの監視制御およびデータ収集システム(SCADA)は,これらのさまざまな側面をまとめている.

1.2.4.2.f ラジオ - 通信 - 低電圧回路

これらには以下の施設がある.

  • 緊急時における電話ネットワーク
  • 管制室や緊急隊の無線ネットワーク.トンネル利用者に向けて安全に係る情報や指示を発信することができる無線チャンネル
  • 異常を検出および測定するための多数のセンサー
  • CCTVのネットワーク
  • AIDシステム(自動事故検出)は,通常CCTVシステムと関連づけられている.AIDシステムは検出の信頼性と効果を向上させるためにカメラ数を増加させる必要がある.

1.2.4.2.g 標識

標識に関しては標識を参考とする.

他の施設以上に,過剰な標識の設置はその関係性と目的に弊害をもたらす.

シグナリング(非常警報装置と利用者への案内に対する優先順位)の読みやすさ,一貫性,均質性と階層構造は,トンネル内とそのアプローチ上での標識の設計に関して優先されなれければならない.

固定された標識板,車線の案内板,可変メッセージ標識,交通信号や停止灯,非常口案内板,これらの出口を特定する標識,非常駐車帯の標識,車線を閉鎖するための物理的な装置(取り外し可能な障壁),車道部の視線誘導線とランブルストリップスは,すべての標識の装置の一部である.これらは利用者とのコミュニケーションの一部を確保するものである.

1.2.4.2.h 消火活動用の装置

火災検知器は局所的(地下変電所または機械室における火災検出)もしくは交通空間内において線上(熱感知ケーブル)に設置されている.

消火活動のための様々な装置は以下のとおりである.

  • 利用者が使用するための粉末消火器
  • 消防士のための設備:水道管や消火栓-一部の国における発泡パイプ.防火水槽の容積はさまざまである.それは,地域独自の規制やトンネル固有の条件に依存する.
  • いくつかのトンネルにはFFSSが設置されている.(上記 1.2.4.2.cを参照)

1.2.4.2.i その他の機器

その他の機器については,安全に関する目的や必要性,快適性と構造の保護に応じて設置される場合がある.以下に例を示す.

  • その他の機器については,安全に関する目的や必要性,快適性と構造の保護に応じて設置される場合がある.以下に例を示す.
  • 煙が充満するトンネル内における消防士の安全な活動を可能にするため,側壁部の手すりや固定された救難柵
  • 側壁に描かれたペイントまたは設置されている簡易なパネル
  • 火災によるダメージにから構造物の安全を確保するための装置.このような安全性の確保はプロジェクトの当初から考慮される必要がある.熱交換は(覆工もしくは地盤との)火災の間だけでなく空気の特性を考慮して変更される.それを基に換気施設の規模を決める設計がなされなければならない.
  • トンネル外の自然環境に排出する前にトンネル内の舗装で集められた水の管理と処理
  • トンネル坑口における環境条件を測定するための機器,規制値を超過した場合,特定の操作手順がとられる.

1.3. 修復-既設トンネルの更新

  • 1.3.1. 診断
  • 1.3.2. 補修と更新の計画
  • 1.3.3. 設計の実施と建設

運用中の既設トンネルの更新(特に安全性向上のための)と補修について,その分析と実施方法による特定の問題が生じる.既存の空間と制約を考慮する必要があるため,新設トンネルほどの自由度はない.それぞれの施設の種類とそれらの統合に関連した特有の技術は新設と既設で同一である.

供用中のトンネルの補修や更新は,作業中の安全条件の低下や交通量や交通条件によって受ける極めて高い影響によって,建設工期とコストの増加につながる場合が極めて多い.これらの短所は実際の既設トンネルの状況や条件やその施設と環境だけでなく,交通への影響を軽減するための考え方と手順が欠如した不完全な分析の結果である.

既存のトンネルの安全性の評価と改善では,既設トンネルの安全の診断と更新計画の開発のための方法論を提案する.さらに維持管理と改修作業中の運用では,既設トンネルで実施される作業に関連した特有の問題を示す.それらの処理は上記の問題を軽減するのに資する.

しかし,以下のセクションの要点にも,読者に対して注意すべき内容を示している.

1.3.1. 診断

トンネルの詳細で厳密な診断は更新や補修を実施するうえで不可欠な手順である.残念ながらこの手順はしばしば無視される.

トンネルの物理的な診断が必要である.

  • 詳細で,かつ正確な方法で機能および幾何構造を評価,把握すること
  • 構造の詳細な条件の記述を確立すること.特定の耐火性,不確実性および潜在的なリスクの評価と,詳細設計のための確実な基礎となる条件を提供するために必要となる試験を記載すること
  • すべての既存の機器とその機能,条件,技術,実際の特性(試験や計測が必要とされる)と使用できる可能性がある予備部品の在庫を記載すること
  • 機器を交換する前の残存寿命の評価と,市場での代替品が入手可能かどうか(特に技術陳腐化による留意が必要)の供給能力を確認すること
  • 維持管理と点検報告書,機器の故障や故障率を確認すること

この物理的な診断は,組織体系,維持管理と操作方法に関する診断によるだけでなく,安全と救助の介入の組織体系に関連するすべての書類に関する特別な診断によって補完する必要がある.この段階では最終的な補修の前の初期の状態でのトンネルの全体的な安全性の状況を改善するために,様々な関係者の訓練活動の確立につながる可能性がある.

診断においてはトンネルの現状に基づいてリスク分析が行われる必要がある.この分析には2つの目的がある:

  • トンネルが補修前の現状において運用し続けられるかどうか,もしくは一時的な移行措置をとる必要があるかどうか評価を行うこと - 一部の車両へのアクセスの制限 - 監視と介入のための規定の強化 - 追加装備 - など
  • 補修計画の定義を改善するために,安全性の観点からの既存の状態を考慮した構成とすること

診断では,もし既存の施設が特に作動条件によっては,修正されるか,追加されるか,またはアップデートされた施設(技術的な互換性,特にデータの収集と伝達のための性能,自動的に動作する装置およびSCADA)に将来的に統合されるのであれば,(工事期間中に新たなリスクの発見を行わずに)確認されなければならない.

1.3.2. 補修と更新の計画

2つの段階からの補修と更新の計画が進行する.

1.3.2.1. 第一段階:計画の作成

計画の作成から結果:

  • 上述した詳細な診断
  • トンネルの初期状態を考慮したリスク分析
  • 安全性に関する顕著な差異
  • トンネルの更新を可能にするため将来的な拡幅や既存の空間を確保することが可能であるかどうかの分析

トンネルの物理的な環境と使用可能な空間に依存するため,社会インフラや施設の最適な更新計画は,許容される条件下においては実現可能性がない場合もありうる.また,より制約がある更新計画を立案する必要がある.この制約がある計画では,完了後に感覚的なものとして,必要とされる安全性レベルが達成されるように緩和措置の実施を必要とする場合がある.

1.3.2.2. 第二段階:計画の検証

計画の検証が必要であり,

  • その計画によって導入された新たな手順を判断するために更新後のトンネルの最終状態を元にしたリスク分析を開発.この分析は初期状態に基づき,事前の分析に使用したものと同一の方法で確立されなければならない.これにより最適化の検討が可能になる.
  • 運用の必要条件の下での改修や補修を実施するための作業の実現可能性に関する詳細な検証:例えばトンネルの閉鎖または一時的な交通規制の禁止.その計画の目的と必要な作業が両立しない場合には,繰り返しの検討が必要である.この繰り返しの検討にあたっては以下の内容が懸念される.
    • 計画自体,計画の適応性と一つには安全の目標,また一方では必要とされる運用条件での開始が両立するか
    • 更新計画による作業を物理的に実施するために修正される必要があるかもしれない運用の必要条件

更新または補修計画は必ずしも物理的な作業を必要としない.トンネルの機能,または運用準備の修正となる場合がある.例えば,

  • トンネルの通行を許可している車両のカテゴリを変更:トラックの通行禁止 - 危険物積載車両の通行禁止,
  • 交通規制の具体的な手順の設定:常時かまたは渋滞時か
  • 最初に対面交通でトンネルを運用し,一方向交通の運用に切り替えること
  • 管理や介入のための手段の変更

1.3.3. 設計の実施と建設

設計の実施や建設の段階では,補修や更新などの計画を実際に技術的かつ契約的な仕様に言い換え,それを開始する作業を含む.

この段階では特に詳細な分析が必要である:

  • 建設の連続した段階,これらの各段階での内容,作業の論理性と優先順位
  • 各施工段階におけるトンネル内の安全条件.これは緩和措置が必要な場合のその実施と部分的なリスク分析が必要である:交通規則 - 交通規制 - パトロール - 介入手段の強化 - など
  • トンネル内の交通状況と施工中(昼間と夜間,通常の期間と休暇期間の異なる取り決め),変更の可能性,交通全体に対する影響や施工範囲内の安全条件などのさまざまな段階によるその部分的かつ一時的な規制の取り組み
  • 一つには受注者のための契約上の仕様を定義するために,そしてもう一方ではすべての一時的に必要な一時的な措置を実施するために,そして利用者や住民のための情報キャンペーンを始めるための部分的および全体的な施工の契約期限の制限と制約

1.4. "トンネルの一生"における段階

  • 1.4.1. 設計
  • 1.4.2. 施工
  • 1.4.3. 試運転
  • 1.4.4. 運用

トンネルの一生は,以下のような主要な段階に任意に分類することができる.

1.4.1. 設計

設計は新設トンネルの一生において最も重要な段階であり,建設や運用にかかるコスト,安全性,技術的・財政的リスクマネジメントの観点で決定的な段階である.

この段階では,トンネルを構成する「複雑なシステム」の全てのインターフェースを横断的に統合することが必要であるが,

残念ながらそれが行われているケースは希であり,多くの場合,独立していると見なされている各段階を繋げたものがトンネルの設計となっていることは経験的に明らかである.皮肉なことであるが,以下のことに言及することができる:

  • 機能が必ずしも明確に定義されているわけではない.
  • 線形は,トンネルやその制約事項,全体の最適化の可能性を統合することなく設計されている.
  • 土木は,建設コストおよびリスクに結びつく全てのことを,平面・縦断線形によって調整する.
  • 設備や安全性のレベル,運用は,何らかの形で組み込まれるが,必ずしもそれ以前の段階で選択された内容に適したものであるとは限らない.

1.4.2. 施工

土木に関しては,技術的なリスク(特に地質的なもの)や,工費・工期に関する事柄全てをマネジメントすることが,最も重要である.

施工時のリスクマネジメントに関することは,設計段階から考慮する必要がある.これらの検討事項は,詳細に記述し,トンネルの所有者と共有されなければならない.また,リスクに関する決定事項は,文書で明示されなければならない.

ある程度のリスクを負担するという決定は必ずしも間違いではなく,禁止されているものでもない.なぜなら,例えば過密な工程において,全ての不確定要素を取り除くために必要とされる全ての調査を行うことは現実的ではないからである.

しかしながら,リスク負担の決定以下の事項を熟考した上で行わなければならない.

  • 発生し得る結果―遅延,工費,人的・環境的影響,安全,工期等―これらは明確に特定,分析,確認されなければならない.
  • この決断における真の問題点,成功の可能性,その実質金利

リスクを負担することは,様々な当事者における不注意や能力不足の結果であってはならない.

運用施設に関しては,読者の関心は以下のものにある.

  • 設備寿命,信頼性,メンテナンス性の最適化につながる全てのもの,
  • 部品の製造から,組立て,取付け,統合後の部分的・全体的試験に至るまでの,厳密なプロセスの必要性および設備の機能性・性能・品質に関する連続的な制御
  • 工費が若干増加するとしても,機器や受注者の選定に関する品質への追加的な報酬.初期コストの減額による節約は,しばしば維持管理コストの増加や,供用下での介入の困難さ,利用者へのさらなる制約に直ちに繋がる.

1.4.3. 試運転

"トンネルの一生"におけるこの段階は,過小評価されるとともに,遅れて考慮されることが多い.この段階は時間を要するが,そうと認められることはあまりなく,不十分な条件下での試運転となるか,安全面で無防備な条件下での試運転となりがちである.

この段階では,以下のものが含まれる.

  • 運用および維持管理を行う組織
  • 通常のトンネル運用条件および最小運用条件(MOC)における運用,維持管理,介入,安全の全ての手順に関する開発と調整
  • 職員の採用と訓練
  • 機器が完全に揃わない限り実施できない,設備の"予行演習"(軽微な調整介入のみを要する準備をともなう可能性あり)
  • トンネルの試運転を行う前の,全ての介入チームやサービスを巻き込んだ実践,訓練,演習

1.4.4. 運用

主な目的は,以下のことを確実に行うことである.

  • 全ての施設の維持,管理,そして修繕
  • 利用者の安全性と快適性

日常のルーチンワークから距離を置き,状況を客観的に見ることができるようになることも必要である.それは以下のことを行うためである.

  • 経験からのフィードバックを確立し,安全性を確保するために手順・介入条件・演習を適合させる.
  • サービスや安全性のレベルを落とすことなく,運用コストを最適化する.
  • 大規模な補修,改築,更新作業の同定,分析,計画,実施

1.5. 建設,運用,改良に係るコスト – 資金的側面

  • 1.5.1. はじめに
  • 1.5.2. 建設コスト
  • 1.5.3. 運用コスト
  • 1.5.4. 改修とアップグレードに関するコスト
  • 1.5.5. 資金調達に関連する特徴

1.5.1. はじめに

トンネルは,建設・運用の面から,比較的高価な土木構造物である.プロジェクトの初期段階から,技術的・資金的最適化の可能性に注意しなければならない.

設計初期段階から,以下のプロセスを踏むことが推奨される.

  • トンネルの"機能"の詳細な定義
  • "バリューエンジニアリング分析"の反復プロセス.プロジェクトの全ての戦略的段階において行われるもので,リスク分析における様々な段階に組み込まれなければならない.
  • 設計・施工段階における潜在的なリスクの詳細な分析とモニタリング.これらの潜在的なリスクは,以下に関するものである.
    • 特に地山の複雑さに関する技術的不確実性(地質的・地質工学的不確実性)
    • 交通量予測の不確実性.これは,コンセッション方式によって建設や資金調達をした場合の収益に関して,重大なリスクの構成要素となる.
    • 資金調達環境に関する不確実性とリスク.特に金利や資金調達および借り換えの条件の変化.これは,コンセッション方式あるいはPPPによって建設や資金調達を行った場合において,重大なリスクの構成要素となる.

このプロセスにより,プロジェクト(建設・運用コスト)の最適化や,技術的・資金的リスク管理の改善が,工期と同様に可能となる.

1.5.2. 建設コスト

1.5.2.1. キロ当たりのコストの比率

トンネルの建設コストは非常に変わりやすく,キロ当たりのコストの比率について典型的なものを示すのは不可能である.なぜなら,特に以下の項目によって,大きく変動(平均的には1~5倍)するからである.

  • 地質条件
  • アクセス道路やトンネル坑口に関する難しさ
  • トンネルの地理的な位置:都市部か非都市部か
  • トンネルの長さ:特に,長いトンネルでは換気施設や非常用施設がより重要なウェイトを占める.一方,短いトンネルではアクセス道路や坑口に関する作業がより重要な影響を及ぼす.
  • 車線数や換気施設の規模の決め手となる交通量
  • 交通の性質:特に,危険物積載車両が通行するトンネルは,換気や安全性,恐らく火災に関する構造耐力についても,高価な対策が必要となる.一方,軽車両の通行に限られたトンネルは,車線幅や内空高さ,換気施設を縮減できる可能性があるので,大幅にコスト削減ができる場合がある.
  • トンネルの影響を低減させるための高価な保護対策が必要となる可能性のある,トンネル周辺環境
  • 建設リスクの管理や共有のために行われる対策
  • トンネルが建設される国を取り巻く社会経済的環境.その影響はコストの20%に達する場合がある.

せいぜい,普通のトンネルが平均的な地山条件で建設された場合の平均的なコストが明かり部の等価な構造物の10倍程度であることを示せる程度である.(outside of urban areas).

1.5.2.2. 建設コストの内訳

トンネルの建設コストは3つのタイプのコストに分けることができる.

  • 土木構造物としてのコスト
  • 運用施設のコスト.監視センターや,公共ネットワークからのエネルギー供給を含む
  • その他のコスト:特にプロジェクトを推進するための所有者のコスト - プロジェクトマネジメント,設計と現場監理,測量や地質調査,環境調査および軽減策,用地買収,様々な手続き,等

下記の2つの図は,トンネル建設コストの内訳の例を示したものであり,片方は土木工事の条件が複雑ではない場合,もう一方は土木工事の条件が比較的良くない場合である.

図 1.5.1:建設コストの内訳

図 1.5.1:建設コストの内訳

注:これらの図は土木工事のコストの重要性を示したものであり,右図は土木工事費が約2倍となった場合の結果を示したものである.

1.5.3. 運用コスト

トンネルの運営コストは,3つのタイプのコストに分けることができる.

  • 運用コスト:基本的には人員配置やエネルギー,マネジメント,消耗品といったもの.これらは経常経費である.
  • 維持管理にかかる年間コスト
  • 大規模な改修コストおよび寿命や状態に応じた設備の交換コスト.これらのコストは頻繁に発生するものではなく,設備やその品質,維持管理状況によって異なるが,運用開始から10~12年目ぐらいから発生する.

下記の2つの図は,経済状況が一定だと仮定した場合の,建設コスト(土木工事,運用施設,様々なコスト)と全体的な運用コスト(運用開始から30年分の積算値)を示した例である.

図 1.5.2:30年間のコストの内訳

図 1.5.2:30年間のコストの内訳

注:これらの図は,運用と維持管理にかかるコストの重要性と,常時発生する運用および維持管理のコストの最適化を可能にする配慮について,トンネル設計の初期段階から考慮することの必要性について示したものである.

1.5.4. 改修とアップグレードに関するコスト

この章では,新しい基準に準拠した施設のアップグレードに必要な改修やアップグレードに関して記述する.これらの業務は,避難施設,火災に対する構造の耐火性,運用および安全設備,そして新しい安全基準を満足するために必要なすべてのものが対象である.

既設トンネルの多様性,それらの状態,交通量,そして,多かれ少なかれ各国ごとに異なるであろう新安全基準の要求事項の重要性などのために,統計的な価格を提示することは不可能である.

フランスにおいて2000年より観察を行った新基準に準拠するための更新作業のコストは,約1千万ユーロから数十億ユーロの範囲で(20億ユーロを超える予算規模の更新プログラムもいくつか存在していた),予算に大きな変動があることが示されている.

1.5.5. 資金調達に関連する特徴

トンネルは建設時と運用時の両面でコストのかかるインフラ構造物であるが,地域開発,交通の円滑性,快適性,安全性,(山岳部を避けるという)信頼性の高いルートを提供するだけでなく,環境保護の面からもトンネル建設によって得られる経済的効果によって,コストは相殺される.

これらの業務は以下のいずれかによって資金調達がなされている:

  • “伝統的な方式”:公的機関,公共の課税もしくは燃料税などの財源によって実施される資金調達とメンテナンス
  • 民間企業もしくは半公共団体が,定められた契約期間の中でトンネルの建設と運用の役割を担う“コンセッション方式”.この事業体は,建設と運用のコストだけでなく,リスクと金融費用を(しばしば部分的に借款によって)調達する役割を担い,利用者が支払う通行料などによってこれらを相殺する.この種の“コンセッション方式”は,譲渡者の財政的関与もしくは特定の保障(例えば,最低交通量を保障することで,設定最低交通量に達しない時に金銭的補償を行う)を与えられることができる.
  • 以下のものに関連したPPP(官民パートナーシップ)またはその類似方式の"混合方式":
    • 建設のみ,もしくは建設と運用のみ
    • “設計・施工”の場合のような“一括受注契約”方式による建設
    • 部分的または全体の資金調達

現在のマニュアルでは,融資のこれらの各種モードを詳述した,またはそれらのメカニズム,および長所や短所について提示する意図はない.しかしながら,経験に基づいて,初歩的な模式図を与えている,いくつかの主要なガイドラインを提示することは興味深い.

a) 公的機関による資金調達

  • この方式による資金調達は広く採用されている.“コンセッション方式”による資金調達が(通行料徴収から十分な収入が得られないことによって)達成できない,もしくは政治的な理由により通行料の徴収が行われないとき時でも,この方式を用いることで社会基盤計画の開発を進めることが可能となる.
  • しかしながら,この方式では公的機関が資金を確保する財務能力を持っていること,または資金を借りて債務を保持する能力を持っていることが必要となる.財源は基本的に,公共の課税もしくは燃料税,時には部分的に通行料の徴収によって確保している.

b) "コンセッション方式"による資金調達-グローバルな社会基盤の中の一部であるトンネル

“非自立型のトンネル”の資金調達を(譲渡者の財政的関与の有無に関わらず)“コンセッション方式”によって行うことは,通行料を徴収する新規の都市間高速道路の一部であるトンネルの場合では一般的となっている.トンネルにおける(建設および運用の)コストは,トンネルと明かり構造部との間で共有されている.新しい社会基盤が時間短縮や信頼性の向上,快適性そして安全性を確保していれば,単位距離当たりの平均的な通行料が高くても,利用者は受け入れることが経験的に示されている.

c) “コンセッション方式”による資金調達-単独のトンネル 

単独のトンネルでは2つの主要なカテゴリがある.

  • 交通状況の大幅な改善に寄与するトンネル.このケースは,交通量を緩和し,走行時間を低減することを目的とした特定の都市トンネルに該当している.経験的には,次の条件を満たす時にのみ,“コンセッション方式”による資金調達を見込むことができる:
    • 大きな交通量
    • 生活と収入水準の高く,財務バランスを確保するために不可欠な実質的な通行料金の設定が可能な国
    • 比較的高い通行料の見返りとして利用者が受け入れる大幅な時間短縮
    • 少なくとも約50年間のコンセッション期間
  • 大きな自然障害物(山脈や河口)を通過することを目的とする“地域開発型”のトンネル.これら障害物は交易上の重要な障害となっている.初期の交通量は比 較的低い.トンネル建設による新しい接続ルートが交通の発達を可能とする,ただし,こうした発達量を事前に予測することは非常に困難であり,これがコン セッション方式の資金調達の金融リスクにおける本質的なパラメーターとなっている.経験的には,“コンセッション方式”による資金調達が次の条件を満たし たときにのみ現実的なものとなることが示されている:
    • 自然障害物が大きな影響を与え,トンネルが有料であるにも関わらず,既存のすべての交通手段を引き付けるために十分に魅力的であること(時間短縮,サービスレベル,提供されるサービス,接続ルートの信頼性)
    • 財政的支援もしくは建設および工事の一部に対する直接的な関与(例えば,アクセス道路の建設)のどちらかを含むような譲渡者(おそらく出資者)による財政的な関与
    • 最低交通量に達しない時に契約により財政的な支払いを伴う,譲渡者による最低交通量の確保
    • もし,規定された超過制限もしくは条件を契約により規定できれば,主要なリスクを共有するための契約上の取決めにより,リスクに関する財務モデルを設定することができること
    • 非常に長いコンセッション期間の設定:多くの場合70年以上
    • 譲渡者による金融保障,これはコンセッション事業体が金融市場においてより好ましい,金融計画の実行可能性を確保するような,ローン条件によって利益を得ることを可能にする.

d) PPPもしくはその類似方式による資金調達

  • PPP方式が扱う内容は広範囲にわたっているため,ガイドラインを確立することは困難である.
  • この方式による資金調達は,公的機関が長期に渡り出資することを確約する.伝統的な資金調達方式に対して,この方式の資金調達に本当に利点があるかを評価するために詳細な分析が必要になる.実際,開発者が想定するリスクを補償し,(等しい機能と品質を持った)プロジェクトの総括的なコストを増加させるために,この方式による資金調達がかなりの頻度で貢献している.
  • 公的機関は,プロジュクトの進展において重大な誤解および予算超過を招く可能性のある,あらゆるあいまいさを防ぐために,品質,快適性,安全性,サービス水準,耐用年数,利用率,罰則等のトンネルに必要な機能を慎重に決めなければならない.

1.6. 規制-推奨事項

多くのトンネルを持つ国々では設計,建設,運用,保守,安全性そして救助隊のアクセス方法等に関する規制を設け,推奨事項と指針を策定している.

道路トンネルの安全性の条件に関して,EUに属する国々では,欧州横断道路網の一部となる500m以上のトンネルにおいて利用者の安全性を確保するために実施される最低限必要な措置について記述されている Directive 2004/54/CE により規制を受けている.また,欧州諸国の多くの国々では道路による危険物の国際輸送に関する欧州協定 (ADR) およびトンネルに関する具体的な措置を含む国際協定によって規制を受けている.すべての加盟国は,これらの欧州の規制を自国の規制に移行させている.いくつかの加盟国では,欧州規制を移行させたものよりも,さらに要求の高い規制を追加して実施している.

道路トンネルの運用と安全性に関する規制と推奨事項のリストは,PIARCと国際トンネル協会 (ITA - AITES) の地下施設運用安全性に関する委員会 (ITA-COSUF) 間の協力によって設立された.この文章はITA-COSUFのウェブサイトで参照することができる.このリストは完全ではないが,世界27の国々と3つの国際機関の国際委員会のものを示している.

多くの国々では,領土内に道路トンネルを持っていないために,トンネルおよびトンネルの安全性に関する規制を設けていない.これらの国々では,様々な起源をもつ文章を掛け合わせるのではなく,トンネル分野において長い経験を持つ国における既存の規制に関する一括的なすべてを含むパッケージを選択することを推奨する.PIARCの推奨事項は,現在のマニュアルの中に要約されており,同様に European directive 2004/54/CE の中にも,頻繁に適用されている国際参照が記載されている.

 

1.7  複雑な地下道路ネットワーク   

  • 1.7.1 Introduction
  • 1.7.2 Part A “Case Study”
  • 1.7.3 Particular strategic challenges
  • Multimedia Kit

This chapter consists of two main subsections:

  • A summary of the report prepared by the working group 5: “Complex Underground Road Networks”, published during the 2015 congress in Seoul (see §1.7.1 and §1.7.2),
  • An analysis of the particular strategic challenges relating to “Complex Underground Road Networks” (see §1.7.3). 

1.7.1   INTRODUCTION

“Complex Underground Road Networks” has been the subject under consideration by the PIARC Working Group 5 throughout the course of the 2012-2015 cycle. 

The working plan consists of two sections:

  • Part A “Case Study”. This part reflects investigations carried out throughout the course of the 2012-2015 cycle. A report on this is available on the PIARC website: 2016R19EN Road Tunnels: Complex Underground Road Networks. A summary of this report is presented in §1.7.2 below; 
  • Part B “Specific Recommendations”. Studies and specific recommendations will be the focus of the 2016-2019 cycle and will be published in a second report at the end of the cycle. 

The terminology “Complex Underground Road Tunnels” covers the following infrastructure:

  • A sequence of successive tunnels: examples include the analysis done on Prague, The Hague, Oslo and Tromsø;
  • Multimodal tunnels: examples include the analysis done on The Hague and Lyon with shared usage between buses, pedestrians, bicycles and trams;
  • Tunnels giving access to business and commercial centres (for public access and freight delivery): examples include the analysis done on Helsinki and Paris-La-Défense. These structures usually comprised a multitude of interfaces between numerous operators which represents a significant part of their complexity;
  • Tunnels with a dual function as transit and access to underground car parks: examples include the analysis done on Annecy, Brussels and Tromsø;
  • Tunnels with reduced vertical clearance: examples include the analysis done on Duplex A 86 in the Parisian region;
  • Underground infrastructure with numerous entrances and exits, as well as underground interchanges. This category of tunnels network identified as the key example of “complex underground road tunnels” is the most important in the panel of analysis. 

All the structures share several similar characteristics:

  • Their complexity,
  • Their location - essentially in urban and suburban areas,
  • Their numerous interfaces with other infrastructure or neighbouring networks to which they are connected, thus creating as many interactions between the operators of various infrastructure and networks. 

1.7.2  PART A “CASE STUDY”

1.7.2.1 OBJECTIVES AND METHODOLOGY

The objective of the case study was to identify structures of this type around the world, to summarise collected information, to analyse it and to establish a number of preliminary recommendations for owners, designers and operators. 

While this collection of information is not exhaustive and the summaries do not constitute a scientific database, it nevertheless contains pertinent and interesting findings. The collection of information was limited to the countries of origin of the Working Group 5 members, wherein the working group had active correspondents available to them. 

The general methodology has been the following:

  • Drawing up a detailed questionnaire,
  • Surveying through interviews with operators, owners and designers,
  • Analysis of the information gathered during the investigation,
  • Establishment of summaries,
  • Writing up of preliminary recommendations.

At more than 600 pages, a significant volume of information was collected.  Therefore a direct publication of all information has been deemed unsuitable.  The working group decided to:

  • Present an overview of the information,
  • Establish a monographic sheet for each of the analysed structures (see §1.7.2.5).

1.7.2.2 TUNNELS INVESTIGATED

Twenty-seven (27) “tunnel complexes” were analysed. The list is provided in §1.7.2.5 below. Several “complexes” consist of two to four tunnels and the actual analysis reflects a total of 41 individual tunnels. 

The geographic distribution of structures analysed is shown in the graph below :

Fig 1.7.1 : Distribution of tunnel complexes within the case study and detailed distribution in Europe

Fig 1.7.1 : Distribution of tunnel complexes within the case study and detailed distribution in Europe

The European tunnels seem over-represented in the sample analysis. This stems, 

  • from a greater precedence of structural planning of this nature in European territories, from a large necessary investment cost (limiting the number of countries that are able to bear the expense); 
  • from the difficulty of collecting complete information from several countries (outside of Europe) that were initially identified. 

Particularly, investigations in Chile (Santiago), in Australia (Melbourne and Sydney) and a second project in South Korea were unfortunately unable to be completed by the production date of the current report. They will be the subject of future updates throughout the course of the next cycle during which supplemen-tary analysis from Germany, China, Japan, Singapore and the USA will also be considered. 

1.7.2.3 SUMMARY OF KEY INFORMATION

The key information outlined in the analysis focus on the following aspects:

  • The ‘nominal length’: these lengths span from 400m to 16.4km;
  • The overall length of each underground network: these lengths span from 1.1km to 32.8km;
  • The year of commissioning: the oldest tunnel of the sample was opened in 1952; the most recent tunnels were put into service in 2014. Of the tunnels investigated, 73% have been put into operation during the last thirty years;
  • Traffic volume: the three busiest tunnels have a traffic volume between 150 000 and 160 000 vehicles per day;
  • The geographic location of the structures with regard to the number of inhabitants populating the urban area serviced by the tunnel(s);
  • Methods of construction: 44% were constructed by cut and cover, 44% by drill and blast, and 12% by TBM or shielding or immersed tube;
  • Minimum geometrical characteristics including horizontal and vertical alignment;
  • Maximum gradients for ramps on an incline and slopes on a decline;
  • The number of underground interchanges or entry and exit ramps: for example, two tunnel complexes consist of more than 40 entrances and exits;
  • The lane width: these are in the range of 3.0m and 4.5m with two thirds of the structures having a lane width equal to 3.5m;
  • The vertical clearance (free height): these are in the range of 2.0m and 4.8m;
  • The lateral elements: emergency stopping bays, sidewalks;
  • The speed limit, which is limited to 70 km/h in the majority of structures investigated;
  • The nature of traffic: the majority of tunnels investigated prohibit heavy vehicle usage;
  • Breakdown and accident rates;
  • Annual number of fire incidents;
  • The emergency exits and safety equipment;
  • The ventilation system;
  • The organisation of operations and maintenance.

1.7.2.4 PRELIMINARY RECOMMENDATIONS

As the outcome of this analysis, the working group established a number of preliminary recommendations. These recommendations will be the subject of detailed additional developments which will be published in Part B of the report at the end of the 2016-2019 cycle.

These preliminary recommendations, presented in Chapter 11 - Present Situation, Comments and Preliminary Recommendations of the report, deal with the following aspects:

a - Geometry

Underground road networks are located mainly in urban areas, and their design (in particular their alignment) has several constraints.

Geometrical conditions which often contribute to traffic incidents, include: meandering curved alignment, insufficient visibility near the access and exit areas, insufficiently defined characteristics of merging or diverging lanes and, poorly designed exit ramp connections towards the surface road network leading to congestion in the main tunnel, etc. 

It is recommended that in preparing the alignment, the following be considered:

  • Not to be limited by a simple geometric approach, linked only to underground and surface land constraints, 
  • To implement an overall vision, particularly taking into account the land constraints, the initial traffic conditions, the envisaged evolution of traffic conditions, the operation and safety conditions, the geological, geotechnical and environmental context, as well as the construction methodology and all the other parameters that are specific to the project concerned (see § 1.7.3 below).

b - Cross-section

The investigations mentioned above show that 80% of analysed tunnels prohibit the transit of vehicles that weigh over 3.5 tonnes (or 12 tonnes, in some instances). However, the tunnel design does not take into account this restriction, and does not reconsider optimisation of the lane width as well as vertical height clearance. 

Investigations carried out on recent projects show that substantial savings (from 20% to 30% depending on the final design characteristics) can be obtained by choosing a reduced vertical height for tunnels that prohibit heavy vehicle usage. 

It is recommended that at the earliest stage for developing tunnel projects detailed studies be undertaken to consider and analyse the “function” of the tunnel, traffic conditions (volume and nature of vehicles), as well as the financial feasibility and financing methods. This should be done in such a way as to analyse the advantages of a cross-section with reduced geometric characteristics. This may facilitate the financial optimisation of the project without reducing the level of service or affecting the safety conditions.

c - Ventilation

Underground road networks are usually subjected to large traffic volumes. Traffic congestion is frequent, and the probability of a bottleneck developing within the network is high and recurring. As a result, the ventilation system has to be developed with a detailed analysis of the risks and dangers, taking into account the existence of bottlenecks.

A “pure” longitudinal ventilation system is rarely the appropriate sole response to all the safety requirements, especially in the scenario of a fire located upstream of congested traffic. A longitudinal ventilation system will cause smoke de-stratification downstream of the incident location.  This constitutes a danger for any tunnel user blocked or in slow moving downstream traffic. 

The addition of smoke extraction gallery or the choice of a transverse or semi-transverse ventilation system is often vital if no other realistic or feasible safety improvement measures can be put into place, and considered as efficient.

It is also necessary to implement equipment allowing the different network branches to operate inde-pendently of each other.  This will facilitate the control and the management of smoke propagation during a fire incident. 

The risks associated with the traffic of dangerous goods vehicles through a tunnel with a high urban traffic density must be carefully analysed. There are no ventilation systems capable of significantly reducing the effects of a dangerous goods large fire in such traffic conditions.

d - Firefighting

The necessary timeframe for response teams to arrive on site must be subjected to a detailed analysis under normal and peak hour traffic conditions. The objective is to determine whether or not it is necessary to install first line intervention facilities and resources in proximity of the tunnel portals.

The turnover of fire brigade staff is relatively high in urban areas and their interventions in tunnels are rela-tively rare. The high rate of turnover may lead to loss of specialist skills in tunnel intervention. Thus, it is essential to implement tools which allow continuous professional education and training of the teams. A virtual 3D model of the network, associated with simulation software, can provide pertinent, user-friendly and effective tools. 

e - Signage

It is fundamental to ensure clear visibility of the exit ramps and a clear legibility of signage, in order to reduce the risk of accidents where exit ramps diverge from the main carriageway. 

The locations of interchanges, entry and exit ramps, as well as the concept for signage should be analysed from the conceptual of alignment studies. 

f - Environment

In order to reduce atmospheric pollution, communities, stakeholders and residents often demand the installation of filtration devices for in-tunnel air before it is released into the atmosphere. 

This results in a decision to install filtration equipment which is rarely rational or technical, but in ad-hoc response to public pressure. Before any decision-making on this issue, it is, however, essential to:

  • Carry out an analysis to provide an assessment of the expected actual efficiency with regard to air quality, and compare this to the estimation of investment costs and operational costs (especially energy and maintenance costs) in order to establish a rational and balanced projected report of the technical and financial situation;
  • Take into account the progress of the car industry by allowing a reduction in emissions and vehicle pollution and thus limiting the concentration of pollutants. This reduction in pollutant concentration would, over time, lead to the decline in the effectiveness of installed air filtration devices;
  • Analyse international experience and identify the reasons why many existing air treatment installations have been removed from service. 

g – Traffic conditions – Traffic management

The connections between exit ramps and the surface network must be equipped in a way which allows supervision and management of traffic in real time. This arrangement allows traffic congestion to be reduced inside the tunnel, and an improvement of safety should tunnel incidents require quick evacuation of users. 

h - Operation 

The coordination between operators of physically connected infrastructure is in general adequate. However, it is often essential to improve this coordination by clarifying the situation and role of each operator (particularly in the event of traffic congestion and fire incident) by defining common procedures and determining priorities between the different infrastructure parts and their traffic. 

1.7.2.5 MONOGRAPHS

Monographs have been established for each of the structures listed in the table below. They are accessible in the Multimedia Kit at the bottom of the page. The monographs of the structures highlighted in amber are in the process of being updated and will be online shortly. 

TABLE 1.7.2 : LIST OF ANALYZED "TUNNELS COMPLEX"
Continents Countries Cities Names of the tunnels complex Appendices
Asia China (CHN) Changsha Yingpan Tunnel 1-1
Japan (J) Tokyo Chiyoda 1-2
Yamate 1-3
South Korea (ROK) Seoul Shinlim-Bongchun and Shinlim-2 1-4
Europe Austria (A) Vienna Kaisermühlen 2-1
Belgium (B) Brussels Leopold II 2-2
Belliard 2-3
Czech Republic (CZ) Prague Blanka Tunnel complex (3 tunnels) 2-4
Mrazovka and Strahov 2-5
Finland (FIN) Helsinki KEHU - service tunnel 2-6
France (F) Annecy Courier 2-7
Ile-de-France Duplex A 86 2-8
Lyon Croix-Rousse (road tunnel + multimodal tunnel) 2-9
Paris La Défense A14 / A86 motorway interchange 2-10
Voie des Bâtisseurs 2-11
Italy (I) Valsassina Valsassina tunnel 2-12
Monaco (MC) Monaco Sous le rocher tunnel
(2 interconnected tunnels with “Y” form layouts)
2-13
Norway (N) Oslo Opera tunnel (chain of 4 tunnels) 2-14
Tromsø 3 interconnected tunnels with roundabouts
and access to parking lots
2-15
Spain (E) Madrid M30 By-pass 2-16
M30 Rio 2-17
Sweden (S) Stockholm Ring Road – Northern link 2-18
Ring Road – Southern link 2-19
The Netherlands (NL) The Hague Sijtwendetunnel (chain of 3 tunnels) 2-20
North America Canada / Quebec (CDN) / (QC) Montreal Ville-Marie and Viger tunnels 3-1
USA Boston Boston Central Artery 3-2
Oceania Australia (AUS) Brisbane M7 Clem Jones Tunnel (CLEM7) 4-1

1.7.3   PARTICULAR STRATEGIC CHALLENGES

“Underground Road networks” are “complex systems”. All the recommendations presented in Chapters 1.1 to 1.5 above are applicable to them. Nevertheless, certain “subsets” and “parameters” mentioned in Chapter 1.1 present a much more significant potential impact on underground networks. The “interactions between parameters” (see § 1.1.2.2) are generally and much more extended and complex. 

Several major strategic challenges presented in the above chapters, as well as their principal interactions, and the additional parameters below, must be well considered in the process of developing tunnel designs and for the construction and operation of tunnels.

1.7.3.1 GEOMETRY

This term is applicable to tunnel cross-section, vertical alignment, implementation of interchanges, access and exit ramps. In addition to the recommendations from § 1.2.1 the following elements should be considered for:

a – Land occupation

Land occupation deals with the surface occupation in open air (roads, buildings and various structures, parks and protected areas, etc.) and the volumetric occupation of the underground space (underground infrastructures such as metro, car parks, various networks, building foundations, etc.)

The interfaces between the underground and surface spaces are numerous: ventilation stacks, access and exit ramps, evacuation corridors and intermediate emergency access.

The underground and surface land occupation constraints are not always compatible with a given location and it is often necessary to decouple surface structures from those underground. This relationship can be implemented through inclined shafts or underground corridors that link any vertical shafts that are located away from the tunnel alignment. 

b - Geology, geotechnical, hydrogeology

The geological, geotechnical and hydrogeological conditions have a significant impact on the horizontal and vertical alignment especially with regard to the risk of settlement, the possibility of construction underneath existing structures and any required maintained distances to existing surface or underground struc-tures, in relationship with the construction methodology considered.

These conditions can also influence the position of underground interchanges. For example, in the case of loose soil below groundwater level a localised widening of the cross section to build ramp merge and diverge areas could require construction works starting from the surface (large shafts, treatment and land consolidation works). These works require setting up temporary occupation on the surface. Under such conditions the location of underground interchanges should then also consider the type of land occupation on the surface. 

c - Functionality for traffic

The functionality of the alignment mainly deals with areas where connection to the road network at the surface (or possibly with other underground structures) has to be built. The position and the design of the main tunnel portals, the access and exit ramps, as well as the location of interchanges depend on these functionalities. 

The location of all these connections is also linked to the volume of traffic in the underground network, as well as its multiple entrances and exits. The connections must take into account the absorption capacity of traffic in the surface road network, adjustments to connections design in order to avoid underground traffic congestion and thus reduce accidents and significant tunnel fire incident risks.

d - Safety – rRsks of accidents

The analysis of existing networks demonstrates a concentration of accidents around areas with curved geometry, overly steep slopes and insufficient visibility around the merge and diverge areas of ramps. 

All these elements must be carefully taken into account from the early stage of the design of the horizontal and vertical alignments of a new network.  

e - Methods of construction – Time period

The construction methodology has a direct impact on the horizontal and vertical alignments (and vice-versa). They are also strongly guided by the geological, geotechnical and hydrogeological conditions.

The methods of construction can have an important impact on the location of the tunnel portals. In particu-lar, the use of a shield (slurry shield or earth pressure balanced) requires significant site area not only for the assembly of a tunnel-boring machine but also throughout the duration of the works (particularly for the treatment of slurry and provisional storage). A conventionally bored tunnel (when soil conditions permit it) requires fewer facilities close to the portal, and can be accommodated in a smaller site area. 

The analysis for the shortening of construction timeframes can have an impact on the horizontal and vertical alignments, for example in order to make possible intermediate construction access sites. 

f – Environmental conditions 

During operation period of the network, the main concerns are air quality and noise impacts.  These concerns have repercussions on the positioning of tunnel portals and ventilation shafts. These issues must be analysed carefully, in particular the ventilation plants as well as the additional equipment likely to reduce the environmental impact. 

The position of portals, and the associated temporary work site plants, must also be analysed from an environmental aspect in terms of construction methods and timeframes. For example, a conventional method of construction will have a more significant noise impact as opposed to a TBM construction method. If the tunnel portal is situated in a noise sensitive area, works will have to be suspended during quieter night periods, leading to a prolonged construction period and consequent inflation of costs. A modification of the portal location or changes to the alignment can reduce these impacts. 

1.7.3.2 CROSS-SECTION

In addition to the recommendations from § 1.2.2 the following elements should be considered for:

a – Nature of traffic - Function

As mentioned in § 1.7.2.4.b above, the nature of traffic is a factor that must be carefully analysed regarding their initial conditions as well as its evolution over time. Many urban underground networks prohibit heavy vehicles (more than 3.5 t or 12 t depending on different conditions), even though they were designed with standard vertical height clearance and lane width characteristics (defined for the allowance of all types of vehicles).

Analysis of the “function” of the underground network and the evolution of that function is essential. It allows the cross-section to be optimised by choice of geometrical characteristics (vertical height clearance and lane width) to ensure adequacy for the present and future traffic that will use the network. 

Savings made regarding construction costs are significant (from 20% to 30% depending on the chosen characteristics). Where applicable, these savings may allow a project to be financed, and thus feasible, where it may not have been with standard vertical clearances and lane width. 

b - Volume of traffic 

The volume of traffic is the determining factor in defining the number of lanes of the main tunnel, as well as interchange or access and exit ramps. 

The volume of traffic should be taken into account when defining the length of merging and diverging lanes for entrances and exits. The risk of congestion, at the connection of exit ramps to the surface network, must also be considered, as well as the consequences that this has on the main tunnel (bottleneck queue) to determine whether or not it is necessary to design and lengthen a parallel lane upstream from the divergence point of the exit ramp from the main road.  

c - Ventilation 

The ventilation galleries to be installed inside the structure contribute considerably to the spatial requirement. Therefore, it is necessary to proceed to a preliminary “analysis of hazards and risks”, and an initial sizing of ventilation installations before definitively setting the characteristics of the functional cross-section. This approach is often iterative. 

d – Geology - Geotechnics - Hydrogeology - Methods of construction

The geological, hydrogeological and geotechnical conditions, as well as methods of construction (which are often interlinked) have a vital impact on the shape and surface area of the cross-section. The following example illustrates this interaction. 

In loose soil below groundwater level, the use of a shield will be required for the construction of the main tunnel.  The main tunnel will be circular in shape. However, the cross-section will also depend on other functions: 

  • For a tunnel consisting of two tubes, the emergency exits are usually provided by connecting passages between both tubes. The construction of such passageways in these ground conditions is extremely costly since it requires significant ground consolidation works (grouting or freezing). Studies have shown that it is more economical to integrate the emergency galleries inside the excavated section (usually underneath the roadway) and to connect the escape gallery to vertical linkages along the carriageway.
  • A carriageway diverge for exit ramps or merge of on-ramps requires widening of the section over several hundred metres. These works are extremely costly to build in these ground conditions. It is usually more economical to develop a cross-section with a supplementary lane that will be used as an exit or merging lane towards the ramps, and as an emergency stopping lane in the main tunnel. The area requiring costly widening works is thus limited to a few dozen metres. It can be constructed inside a temporary shaft that can also be sized to allow the construction of technical rooms or a ventilation station. 

1.7.3.3  SAFETY AND OPERATION

Recommendations in section 1.2.3 are integrally applicable to “underground road networks”. The analysis approach must, nevertheless, take into account the complexity of underground networks and the aggravating influence of certain factors, in particular:

a - Traffic 

The volume of traffic is generally more significant and in high traffic volume conditions traffic congestion is much more frequent. It follows that the number of persons in tunnel is much higher and in the event of an incident, the number of users to evacuate will be more significant. 

Ramps merge and diverge areas are important locations in terms of risk of accidents. 

The assumption, which is sometimes prevalent from the start of projects, that there will never be a traffic blockage must be analysed with much circumspection. It is indeed possible to regulate the volume of traffic entering into an underground network in order to eliminate all risk of bottlenecks. Nevertheless, this leads to a significant decrease in the capacity of the infrastructure (in terms of traffic volume) which often goes against the reasoning that justifies its construction. Over time, measures of reducing entering traffic must be relaxed, or even abandoned because of the need to increase traffic capacity.  The probability and recurrence of bottlenecks increase, disregarding the initial assumption upon which the network was based (particularly in terms of safety and ventilation during incidents). 

b - Emergency evacuation – emergency access

The analysis must take into account:

  • The potentially higher volume of road users needing to evacuate, and the consequent necessity of providing adequate information, communication and evacuation methods, 
  • The complexity linked to the “network” and its numerous branches, the eventual multiplicity of operators and the resulting interfaces, the precise location of incidents and users to secure and evacuate,
  • The delays in response times, taking into account the traffic and possible congestion of the surface network, a correct identification of the incident locations, and adequate definition of access points and incident engagement methods,
  • The necessity of response teams to have a good knowledge of the network, leading to a reinforce-ment of training and practical sessions (see § 1.7.3.4. above).

c - Ventilation

The concept and design of ventilation systems must take into account:

  • The volume and classification of traffic, as well as its evolution over time,
  • The traffic congestion risks, generally making the construction of a smoke extraction system essential, 
  • Environmental constraints especially discharge points for polluted air, release methods and their acceptability. This would require, if should be the case:
    • The construction of discharge points that are remote from the main alignment and the construction of ventilation galleries independent of the tunnel for connecting the tunnel to the shafts, 
    • The implementation of in-tunnel air filtration systems before release into the atmosphere,
  • The multitude of network branches and the necessity of making them operationally independent of each other to prevent the spread of fumes throughout the network should there be a fire.

d – Communication with users

Communication with tunnel users must be reinforced and adapted throughout the multitude of branches within the network. Communication must be able to be differentiated between the different branches according to operational needs, especially in the case of fires. 

Users must be able to identify their position inside the network, which would require, for example, the installation of specific signs, colour codes, etc. 

Directional signs and prior information signs at interchanges or ramps must be subjected to careful consideration, particularly the visibility distances with regards to signals and the clear legibility of the signage.

e – Operational needs

Specific operational needs (cf. § 1.2.3.6) must be adapted to the complexity of a network, to the volume of traffic and to the resulting increased difficulties of achieving interventions under traffic conditions. 

1.7.3.4 OPERATIONAL AND SAFETY EQUIPMENT

Recommendations in section 1.2.4 are also applicable to “underground road networks”. Nevertheless, anal-yses must take into account the complexities of underground road networks and the supplementary needs or conditions mentioned in Chapter 1.7.3.

The interfaces between operators of associated or related network must be subjected to a specific analysis, particularly for all aspects concerning, on the one hand, traffic management and, on the other hand, safety (especially fire incidents), including evacuation of users and intervention of emergency response agencies in response to fire incidents.

Control centres must take account of the interfaces within the network and between diverse operators. They must allow the transmission of common information which is essential to each operator, and facilitate the possible temporary hierarchy of one control centre over another. The architectural design of the network of control centres, and of their performance and methods, must be subjected to an overall analysis of organisa-tions, responsibilities, challenges and risks.  This analysis should reflect a range of operational conditions such as during normal and emergency scenarios, and should review the interaction between the different subsections of the network and the respective responsibilities of each control centre.   

MULTIMEDIA KIT


Source URL: https://tunnels.piarc.org/en/node/1528