マニュアルのこの第2部においては,運用と安全に関する要件を考慮したトンネルの特別な要素を取り上げている.
幾何構造の章では,トンネルの幾何構造の特徴とそれらが運用と安全に及ぼす影響について取り上げている.
運用および安全性に関連する施設の章では,運用と安全を支援し,トンネルプロジェクトの初期の段階から考慮される必要があり,また,その影響が,特にコストの面で過小評価されてはならない構造的施設について扱っている.
機器およびシステムの章では,異なったタイプのトンネル設備について概説するともに,これらのライフサイクル全体を対象とした勧告を提示している.
最後に,トンネルの火災対応の章では,火災時における材料,構造および設備の性能について取り上げている.
このマニュアルの "戦略的課題"の章で広範囲に述べたように、幾何構造特性は、トンネルの構想段階、さらにいうとトンネルを有する路線の構想段階の最も早い時期に規定する必要がある。
これらの特性はかなり異なる性質からなり、次のカテゴリに分類できる。
この章は、主に技術レポート05.11.B"一方通行道路トンネルの断面形状" と 05.12.B"対面通行道路トンネルの断面の設計" に基づいて述べている。
トンネル工法と断面の関係では、 トンネル工法と断面の関係を述べている。
トンネルの理論および実用交通容量では、交通容量に関係する理論的な概念について概説している。
一般的な幾何構造と各国の例では、 幾つかの国で用いられている道路の一般的な幾何構造(主要な数値を含む)の規定について述べており、またトンネル以内では、規制されるべき最急勾配の規定を除き、あかり部の幾何構造に最大限従うべきであると主張している。
幅員構成では、一方通行トンネルだけでなく対面通行トンネルの車道の横断規定を扱っている。
垂直クリアランスは、 トンネルの垂直方向のクリアランスにについて述べている。
緊急レーン、車道外域幾何構造とその他の構成要素は、 緊急レーン(路肩)や側方余裕の機能、トンネルに沿って設置されている様々な安全施設について述べている。
この章の執筆者は、Willy De Lathauwer(Belgium)( ITA の代表としてC4委員会の準委員)である。
Fathi Tarada (UK) が校閲。
日本語版は,大津敏郎(東日本高速道路(株))が翻訳,真下英人(国土技術政策総合研究所)が校閲,日下敦((国研)土木研究所)が変換作業を担当した.
典型的な道路トンネルの断面形状は、長方形または円形であり、その形状は建設方法に大きく依存する。 表6.1-1に、典型的な断面形状と対応するトンネル工法を示す。
トンネル断面の寸法は、交通に必要とされる断面の大きさに依存する。 これらは、次の項によって変化する。
国際的には、上記の対応は大きく異なっている。 また、それぞれの国内においても、対応が異なっており、時間とともに進展している。
N° | 断面形状 | 典型的なトンネル工法 | コメント |
---|---|---|---|
1 | 円形 | シールドトンネル・トンネルボーリングマシン (TBM) | 日本では、最近の矩 形断面にも適用拡大 |
2 | 矩形 | 沈埋トンネル | 米国では円形断面となる |
3 | 矩形 | 開削トンネル | プレキャスト技術の向上により、上半が円形断面の事例がある |
4 | 馬蹄形 | 爆破工法 | 岩地山に適用 |
5 | インバート付き複合円形 | 従来からある掘削方法 | 岩地山では、馬蹄形が通常 |
道路断面の理論交通容量(基本交通容量)は、時間あたりに通過しうる乗用車の最大台数によって定義される。 それは、15分間の乗用車の測定最大台数に、ピーク時間係数を乗じて求められる。この値は、絶対的な最大値ではなく、むしろ合理的な再現性を有する値である。 このように求められた交通容量は、車線の数と幅、側方余裕および縦断勾配だけに依存する。通行車両の全てが乗用車で、運転手は一般的ドライバーの場合、交通容量は明らかに最大となり、理論交通容量は大型車混入率に依存しない。何も制限がなければ、この理論交通容量は、約2,200台/時/車線(v /h /l)となる。 詳細については、レポート05.11.Bの第4章"道路と道路トンネルの幾何構造に関係する交通容量と速度" とレポート05.12.B.の第3章"交通の速度と密度"を参照。
ある断面の実用交通容量は、前述の制限のない理論交通容量(2,200 v /h /l)より算出される。 制限係数は、道路の実際の特性に基づいて適用され、これらの主な係数は以下のとおりとなる。
一方通行道路の実用的交通容量 Cp は、以下のように計算される。
Cp = 2200 . N . Fw . Fhv . Fc Nは車線数
これらの係数は、レポート05.11.Bの第4章"道路と道路のトンネルの幾何構造に関係する交通容量と速度" と レポート05.12B.の第3章"交通の速度と密度"に掲載されている数式と表に従って計算し、適応させることができる。
詳細については、米国TRBによって発行されたHCM(ハイウェイキャパシティマニュアル)で見ることができる。
小さな曲線は避けるべきである。特に、直線区間と接続される場合は避けるべきである。最小曲率は、550〜600mとする必要がある。 横方向のクリアランスはまた、曲線の視距を考慮する必要がある。
都市トンネルでは、実交通速度や非渋滞時交通流に近い設計速度を考慮すれば十分なはずである。
速度の影響により、長い下り坂はより多くの事故を引き起こす。特に、交通量が多い場合(速度低下の増加)。
断面を縮小することは危険であり,事故を発生させる可能性がある。
トンネル内やトンネル坑口部の車道幅員や側方余裕があかり部よりも小さい場合、きるだけスムーズに進入できるように、トンネル坑口より前に摺り付けが行われるように注意すべきである。: レポート2008R17の4.7章"トンネル坑口のデザイン" を参照。
特大車両が関与する事故は、矩形断面のトンネルや換気用天井板のあるトンネルで頻繁に発生している。
特大車両通行の回避ルートの標識だけでなく、トンネル坑口へ進入前に、物理的に特大車両を停止させる装置をトンネルの外に設置することを勧める。
詳細については、レポート05.04.BのIV.2.6節"高さ方向のクリアランス" を参照。
対面通行トンネルは、一方通行トンネルよりも事故が発生しやすい。 平均的な縦断勾配のトンネル内で、追い越しが禁止されているのをかなりよく見かけるが、急勾配の場合には、遅い車のための付加車線を計画することが適切である。
交通渋滞の緩和には、通行方式を変更することを強く勧める。
高速道路トンネルの建設は、経済性の面から、供用初期段階では対面通行トンネルで計画され、次の段階で一方通行トンネルへと段階的建設が採用される場合がある。しかしながら、この計画は、夏休みや正月などの交通ピーク時の交通量を十分に吸収可能な広いトンネル幅を有している場合に限られる。また、安全性の面から許容可能な場合でも、できるだけ対面通行トンネルの建設は回避したい。市街地のトンネルにおいては、対面通行トンネルの建設はやめるべきである。
地下式インターチェンジ(出入口ランプ)では、事故が発生する可能性が高い。このため、設計は細心の注意を払う必要がある。照明設備は、ドライバーが直面する幾何構造上の変化やその変化点が強調される配置とすべきである。すなわち、ドライバーの視環境を考慮する必要がある。
出口ランプは、坑口から一定の距離を置いて設置されるべきである。 多くの事故の場合、特に負傷事故は、ランプがトンネルを出たすぐのところに設置されている場合に発生している。 用地的な制約がある場合、出口ランプとしてトンネル内に車線を追加することで十分対応できるはずである。
図6.4-1 幅員の例
用語は、以下のように定義する。
詳細については、レポート05.11.Bの第2章"用語"を参照。
良い管理を支援するために、道路は機能に応じて階層ごとに分類される。 最高位に分類される道路ネットワークとしては、トランスヨーロッパ道路網や米国の各州間を接続するインターステート高速道路などがある。 国道網は、各都市地域と国の経済中心地を結ぶ道路で構成されている。 地方道網は、地域の都市間の接続を担っている。 このネットワークや道路に必要な機能や要件は、速度や混雑度、交差点間の距離などで明確化されている。
ほとんどの国は、車道の幾何構造に関する独自の指針やガイドラインを有している。国際的なガイドラインの比較が レポート05.11.Bの第5章"通行レーンと車道" に示されている。
国名とガイドライン等の名前 | 設計速度または基準速度 (km/h) | 車線の幅 (m) | レーンマークの幅 (m) | 車道の幅 (m) |
---|---|---|---|---|
オーストリア RVS 9.232 | 80 - 100 | 3,50 | 0,15 | 7,00 |
デンマーク (案) | 90 - 120 | 3,60 | 0,10 | 7,20 |
フランス (CETu) | 80 - 100 | 3,50 | ? | 7,00 |
ドイツ | 100 (26 T, 26 Tr) | 3,50 | 0,15 | 7,00 |
ドイツ RAS-Q 1996 | 70 (26 t) | 3,50 | 0,15 | 7,00 |
ドイツ RABT 94 | 110 (29,5 T) | 3,75 | 0,15 | 7,50 |
日本 | 80 - 120 | 3,50 | 7,00 | |
日本道路構造令 | 60 | 3,25 | 6,50 |
設計速度100 km / hのトンネル内の車線幅は、3.50メートル未満でないことを勧める。 道路トンネル内で速度制限(80km/hあるいは60km/h)を課する必要がある場合(すなわち、やむを得ない急カーブ、騒音問題、交通容量の限度、コスト削減などの理由)、車線幅を制限する(例えば3.25mまで狭くする)ことは、ドライバーが速度を減らすことに寄与し、速度制限に対する心理的な作用効果が期待できる。なお、このことは、頻繁な交通取り締まりと高い罰金をもって実施されるべきである。小型自動車のみが許可されたいくつかの都市部のトンネルでは、狭い車線が採用されており、カーブでは車線幅が狭いこと注意する標識を設置する必要がある。
詳細については、レポート05.11.Bの第Ⅴ章"車線と車道" 及び レポート05.12.Bの第7章"幾何構造断面"の7.1から7.5 を参照。
車道上の最小クリアランスは、通行を許可されている大型貨物車両の最大高さに舗装の不陸による車両の上下の動きを加味した高さが最小限必要となる。
最小クリアランスは、許可車両の最大高さに依存することから、国によって異なる。ほとんどの欧州諸国では大型貨物車両の最大高さは4.0 mである。特定の国(英国、米国)では、もっと高い車両の通行を許可している。:レポート05.11.Bの第7章”上方クリアランスの確保”に記載の表7.1を参照。
ジュネーブ条約は、大型貨物車両最大を4.3mまで許可しているが、欧州連合では最大4.00mとしている。大型貨物車両の垂直方向の動きを加味した0.20mの余裕を最大高さに加えることで、必要な最小垂直クリアランスは4.20メートル(4.50メートル)となる。
大型貨物車両のドライバーが快適に感じるようにするためには、これらの最小垂直クリアランスに、追加の余裕が必要である。 この快適さの余裕は、トンネル内設備との距離に関係している。快適性余裕を最小高さに加えたのが建築限界高さとなる。快適性余裕を0.30mとした場合、建築限界高さは4.50m(ジュネーブ条約4.80m、英国5.35m、アメリカフリーウエイ4.90m、他の高速道路4.30m)となる。
車道上に設置された設備の損傷を防ぐために、しばしばクリアランス余裕が追加される場合がある。
最後に、これらのクリアランス余裕は、トンネルアーチ部建設の施工誤差や舗装のオーバーレイなどを考慮する必要がある。 レポート05.11.Bの第 7章 "ヘッドクリアランスの確保 と レポート05.12.Bの第 7.8章 "垂直クリアランスを参照。
都市トンネルのように、高さをなるべく縮小しようとする設計については、分けて考える必要がある。
フランスでは十分な研究がなされ、"都市トンネルにおける高さを縮小した設計" (Routes/Roads 288-1995)の記事に掲載されており、以下の項目が示されている。
ここで使用される“車道”と“車道外域”について、相互の共通認識のために、これらの用語を定義つける必要がある。技術レポート 05.11.Bを作成したワーキンググループで、以下のように定義している。
車道外域の構成要素は、国によって大きく異なるが、車道に関する定義や寸法等は、一般的に共通の認識として合意されている。緊急レーンは、緊急時に車両を駐車するための路肩空間に設置される。
緊急レーンは、通常は高速道路の明かり部に設けられている。 トンネル内の路肩空間は経済的な理由でしばしば制限される。 このため、故障車が走行車線にはみ出さず交通流を乱すことなく路肩空間内に駐車することを不可能にしている。
車道外域の形状は国によってまちまちで、一般的な規則や数値は存在しない。多くの国では、経済性を理由に、路肩空間の幅は、車両が駐車するには十分でない。 したがって、一定の間隔で非常駐車帯が設置されている。 しかしながら、ノルウェーとスペインの事例では、故障車の40%しか非常駐車帯を有効に利用していない。このことは、非常駐車帯が完全に緊急レーンの代わりとなるものではないことを意味している。詳細はレポート05.04.Bの第3章8-10節"故障" を参照。
路肩空間は、立ち往生した車を車道外に駐車可能なとなるスペースであるべきである。したがって、外側線から乗用車幅1.75mに運転者の乗り降り可能な幅0.50mを加えた2.45mの幅が少なくとも必要となる。
大型トラックが車道外に駐車する場合、レポート05.11.Bの第6章"車道外域" で説明されるように、幅(2.50 + 0.50 + 0.20 =)3.20 mが必要となる。
図6.6-1:車道外域の安全防護壁の典型的な配置
安全防護壁は、一般的に"トンネル側壁に衝突する車を安全に交通方向へ誘導する大規模構造物"とされている。 それは、トンネル側壁の衝突防止のために設置される柔軟なまたは壊れやすいビーム型構造を有する支柱タイプガードレールとは異なる。トンネルの場合には、側方距離を外側線の内側から監査路縁石全面、安全防護壁またはガイドレールの前面、またはトンネル側壁との内側間の距離とするかは疑問である。低い高さの監査路がある場合、トンネル壁面までの距離が適切な寸法であることが、一般的な認識である。 監査路がない場合は、安全防護壁の基礎まであるいは上部端までの距離を考慮する必要がある。
特に、トンネル内でドライバーは、物体を捉える時の眼球角度が小さな動きとなるように、側壁(または監査路、ガイドレールや安全防護壁)からある一定の距離があることを好む。 経験では、トンネル内の物体との距離が隣接する道路より小さいところでは、運転手はトンネル側壁から距離を保つためにコースを変更することが明らかとなっている。: レポート05.11.Bの第6章"車道外域" を参照。
外側線を横切る車が方向修正を適切にできない場合は、壁との衝突の影響を最小限に抑える必要がある。 これは、安全防護壁やガードレールを設置することで対策が可能である。 安全防護壁はガードレールより少ないスペースで設置できる。車両が小さい角度(鋭角)で安全防護壁に衝突する場合、走行方向へ再び復帰することができ、重大事故を防ぐ可能性がある。 車が大きな角度(鈍角)で安全防護壁に衝突した場合、結果はより深刻かもしれない。 ガードレールは、衝突した車両の方向修正/車線復帰として有効ではないが、鈍角での衝突に対しては、ダメージが少ない。このようなことから,路肩空間が狭い場合,安全防護壁が採用され,広い場合はガードレールが採用されている。
ガードレールは、たわみ空間を必要とするため、トンネルとして余分の幅が必要となることを意味する。このことは、多くの場合経済的な観点から現実的でない。 特に、速度制限がある場合、安全防護壁は有効である。さらに、メンテナンスが少なくすむ利点がある。
交通運用のために最低限必要な断面形状や線形特性に加えて、トンネル内環境下での特有の運用や安全性に対する要求を満足するために、ほとんどの道路トンネルに特別な設備が設置される。
非常口は、トンネル利用者を通行中のトンネルから安全な場所へ徒歩で避難させることを目的に、短いトンネルを除きほぼすべてのトンネルに設置されている。歩行者用の非常口については種々あるが、詳細は非常口で述べることにする。非常口とは、トンネル間をつなぐ避難連絡坑や通路、非常時に安全に待機可能な避難所、トンネルと並行して設置される避難坑や車道下に構築される通路、地表に通じる非常階段などのことをいう。
車両のための設備では、 車両のために必要とされる設備について述べている。これには、退避所や方向転換所、トンネル間車道用連絡坑などが含まれている。これらの施設は、車両が故障した場合などに、車両をUターンあるいは隣接トンネルに移動させるためのもので、維持管理時、事故時の緊急車両の移動や交通管理に使用されるものである。
安全上の凹部では、 安全上設ける凹部(非常駐車帯のようなもの)の幾何構造について述べている。この凹部分は、トンネルの側壁に沿ってある間隔で設置され、故障した車両を車道が他の通行車両の危険とならないように、速やかに移動させる空間としてある。
排水設備は、タンクローリー車の流出事故やトンネル側壁の洗浄水による水たまりを最小限にするために重要である。可燃性液体の漏洩が発生した場合は、排水システムは、結果として火災規模に大きな影響を及ぼす。 トンネルの排水では、 道路トンネルで設置されるさまざまなタイプの排水システムについて述べている。
その他の施設では、 トンネル坑門およびその周辺に設置されるその他の設備について説明している。
この章は、 Robin Hall (UK) の執筆による。
日本語版は,大津敏郎(東日本高速道路(株))が翻訳,真下英人(国土技術政策総合研究所)が校閲,日下敦((国研)土木研究所)が変換作業を担当した.
非常口は、緊急時にトンネル利用者を通行中のトンネルから安全な場所へ徒歩で避難させることを目的に、ごく短いトンネルを除きすべてのトンネルに設置されている。短いトンネルの場合、坑口が非常口と成りえるが、 ほとんどのトンネルでは、トンネル利用者が安全な場所に到達するための距離を短縮するため、非常口を設ける必要がある。
非常口は、以下のさまざまな方法で設置されている。
図7.1-1は、縦流換気方式の一方通向トンネルにおける典型的な避難パターンを示している。.
図 7.1-1:縦流換気方式一方通向トンネルの典型的な避難パターン
非常口の適切な設置間隔は以下の項目に依存する:
最適な非常口間隔は、一般的に100から500メートルとされている。
以下の設計原則が重要である。
図7.1-2:非常口のデザイン(モンブラントンネル:フランス-イタリア)
図7.1-2には、非常口の適切な設計を示 している。
非常口に関するさらなる議論は、 技術レポート1999 05.05.B"道路トンネルにおける火災と煙の制御" にあり、技術レポート2007 05.16.B"道路トンネルにおけるシステムと機器の火災と煙の制御" は、より詳細で最新のものである。
大多数の道路トンネルには、緊急レーンが設置されていない。このため、道路混雑時や、故障車両やそのほかの問題で運転者が車を停車させなければならなくなった場合、渋滞が起きる可能性がある。ドイツとフランスのある統計では、緊急レーンのあるトンネルの方が緊急レーンのないトンネルよりも安全であるとしている。 ("技術レポート2008R17:“利用者に関する人為的な要因と道路トンネルの安全性”を参照のこと。)
待避所があることにより、トンネル内で車道を塞がずに車を停車させ、交通防害や衝突の危険性を低減させる事が出来る。たとえば非常電話を使用する場合等、待避所内では人はより安全に車から降りることが出来る。交通からの退避は特に身体障害者にとって有益である。待避所はトンネルの維持管理のためにも非常に重要であり、保守車両の安全な駐車場を確保することが出来る。
待避所間の距離は、トンネルにより異なる。 いくつかの国のガイドラインでは、これらの距離は 技術レポート1995 05.04.B"トンネル内の道路の安全性“で規定している道路区分 によって決められている。 レポートは、待避所の利用率が一般的に低いと指摘している。 待避所があるトンネルでは、故障車両の20%程度しか待避所で停止しておらず、これを改善するための勧告が出ている。
図 7.2:Uターンベイ例
長 いトンネルでは、車をUターンする設備や、車が隣接するトンネルに入れる設備が備えられている。 これらは、維持管理や事故時における緊急車両の移動に有効で、また事故発生時の交通管理にも役に立つ。 車のUターン専用の設備を設けている国もある。これは通常の乗用車やバンは標準の待避所で容易に回転できるが、大型のトラックやバスを考慮し、大きいスペースが必要となる。 これらの回転場は、通常4m X 17m以上である (技術レポート1999 05.05.B "道路トンネルにおける火災と煙の制御"を参照のこと )。回転場を設置する場合、1〜2キロの間隔で配置する必要がある。
ほとんどの道路トンネルには、その全長に一定間隔で故障や事故の場合トンネル利用者が退避できる緊急ステーションが配置されている。通常、非常電話、簡易消火器(消火用ホースがある場合もある)が設置されている。
これら緊急ステーションの位置や形は多様である。トンネル壁に付けた簡単なBOXから壁の凹部、また仕切られた部屋になっていることもあり、道路との間に扉がある場合と無い場合がある。凹部を設けることで、故障した車をそこに寄せ、搭乗者が他の移動している車に接触するなどの危険を低減することができる。
隔離され外が見えないような緊急ステーションで利用者が閉所恐怖症にならないよう適切な板ガラスの扉を付けることを勧める。より良い選択は、扉は設置せず周りの音を軽減する技術で利用者の話がよく聞き取れるようにすることである。
技術レポート2008R17:"人為的な要因と利用者に関する道路トンネルの安全性" では、このような緊急ステーションの設計に関するヒューマンファクターとして緊急ステーションをはっきりと識別できるようにし、明確な標識で表示するとしている。
機器およびシステムで緊急ステーションに設置してある機器を説明する。
図 7.4-1: 汚水槽とポンプの例
道路トンネルには坑口から流れ入る表面水、覆工から染み出る地下水、壁面の洗浄水、タンク車からこぼれた水や消火水などに対処するため、排水システムが完備されている。
危険物の輸送が許可されているトンネルは、引火性や有毒な液体の排水が重要である。排水設備によってタンク車からこぼれた引火性の液体が大きな溜まりを作らず、火災を最小限にとどめることが出来る。
排水システムは通常、溝、水路、パイプ、液だめとポンプ、油/水分離器 と 道路に排水が溜まらないようそれを集め、分離、排水する制御システムで構成されている。
当局は排水性能を最大化するためスロット・ガターを指定する場合がある。液だめとポンプは通常、坑口付近の低い個所に設置する。
トンネル建設と運営上の水の影響は水への影響で説明する。
トンネル内部、或いは坑口付近の構造物を以下で説明する。
図 7.5.1-1:緊急用凹部
安全上の凹部で説明した非常電話、簡易消火器を備えた安全上の凹部と組み合わされる場合がある。
図7.5.2-1:トンネル機械室
機械室内の配置や面積は設備建物の機械室と同様の原則に従って決めている。たとえば、キャビネットの扉の開閉に十分な広さ、またスイッチに手が届くように設計しなければならない。ケーブル配線と曲げ半径用のスペースを確保することは重要であるが、トンネル設計上や内面積が限られているため屋外の建物に比べて難しいことがある。
トンネル機械室へ安全にアクセスできるよう考慮する必要がある。しかしこれは、トンネル閉鎖中のみ可能ということもある。トンネルによっては、機械室の付近に待避所が設けてあり、トンネルを閉鎖しないで安全に保守車両が停車出来るようになっている。
一方向交通で二つの隣り合わせのトンネルの出口と入口の間は、地形と風の方向によっては空気の大きな再循環が起こる。同じ問題がトンネル出口と半横流換気方式装置の外気取り入れ口との間で起こる。
短いトンネルで効率よく自然換気が出来る場合はこの問題は生じない。しかし長いトンネルではこの影響を抑える必要がある。状況によって、分流壁をトンネル坑口から約20-40メートル延長する必要がある。詳細はレポート1995.05.02B”道路トンネルの排気、環境、換気”のⅣ節2.3”再循環“に記載されている。
トンネル長が数百メートル以上となる場合、事故・平常時、どちらの状況においても、道路利用者の安全性を高めるための特定の設備が必要となる。
事故リスクを低減し、かつ、起こりうる結果を最小限に留めるだけでなく、道路利用者への快適性のレベルを十分に維持するため、多種多様な装置が整備されることとなる。 レポート05.06.B”トンネル運用コストの削減”の第7章 では道路トンネル設備について議論し、そして、 レポート2008R15"都市内道路トンネル"の 第3章 は機器の設計と改修の詳細について述べている。
トンネル内に設置された機器に供給するのに必要な電力は多大なものとなる。電力供給システム(電力供給参照)は、通常時および非常時の両方のケースにおいて、十分な電力を供給する必要がある。これは、例え停電になった場合でも、真に必要な設備に対しては最低限の電力を供給する必要があることを意味する。当然、このような設備については、状態監視をする必要がある。このような理由から、SCADAシステム(監視制御およびデータ収集システム(SCADA)参照)が実装されるのが望ましい。
通信および警報システムについて、最初に述べる(コミュニケーションと警報システム参照)。これは、トンネル内の状況を定期的にチェックし、潜在的な危険や事故に関してオペレーターに注意喚起を促すシステムも含まれる。交通の管制と監視システム(交通監視制御システム参照)に加えて、いくつかの検知システムが設置される。検知システムには、自動事象検出、煙/火災検知器が含まれる。また、事故や火災の情報は、押しボタンや非常電話などを通じて、現場の人々から直接届けられることもある。非常電話は、トンネル内の道路利用者と管制室員との間で、直接情報のやり取りをすることが可能である。非常電話設備は、管制室員にとって現場状況、人々の状態などの付加的な情報を得ることができるだけでなく、トンネル内の人々に注意情報を提供するためにも有効である。このような設備には、トンネル内の道路利用者に警告を促したり、介入を調整するためのシステムも含まれる。拡声放送や公共FM放送のラジオ再放送、管理用無線および緊急隊用の周波数帯は、これらの目的のために使用することができる。
道路利用者への快適性の確保と事故リスク低減のため、十分な視認性の確保および粉塵濃度の低減を図ることが重要である。適切な照明設備(照明参照)と換気システム(換気参照)が不可欠である。換気設備は、火災の延焼と煙の拡散に影響を与えるため、緊急事態発生時に必要不可欠である。交通量とトンネル延長に応じ、換気設備は、自然、機械、または、組み合わせ(通常状態では自然、非常時は機械など)がある。リスク管理の追加機能として、標識設備がある(標識参照)。これは障害物や危険性の周知のみならず、非常口、非常押しボタン、消火設備等を見つけるために重要である。
事故の場合、火災を消火するための設備が必要となる。これらは、トンネル内の道路利用者および緊急隊にとって必要な消火設備(道路利用者と緊急チームのための消火設備参照)や自動制御される固定消火システム(固定消火システム参照)が含まれる。このような状況の場合、遮断設備(遮断機参照)は、トンネル外の道路利用者がトンネル内に進入することを防ぐため重要な設備である。
本章はC4委員会(2008-2011)のワーキンググループ1およびグループ4により記述された。
日本語版は,古澤博文(首都高速道路(株)),市川敦史(東日本高速道路(株))が翻訳,真下英人(国土技術政策総合研究所)が校閲,日下敦((国研)土木研究所)が変換作業を担当した.
トンネル設備やシステムの稼動には電力が必要である。従って、トンネルに電力を供給するための装置が設置されている必要がある。この装置は以下の2つの項目が必須用件となる。
トンネルに供給するのに必要な電力は、トンネル内に設置されている機器の数量や機能と密接に関係している。必要とされる電力(kWh)の量に応じて、電源は低圧または高圧で供給されることとなる。
それぞれの国は、トンネルと電力配電網の構造により、独自の規制要件を満たす必要がある。従って、保持する基本概念は、類似した特徴を持つトンネルであっても、大幅に異なる可能性がある。しかしながら、一致する基本思想について以下に示す。
道路トンネルにおいて、道路利用者のための安全設備は非常に重要な役割を担っている。従って、オペレーターは設備の状態(正常、または、異常)、動作状態(自動、手動または停止)を決定するため継続してそれらの機器を監視する必要がある。
多くの機器は、センサーによりサーボ制御(自動制御)され、あらかじめ設定された閾値に応じて(照明、換気などが)自動的に動作する。その他については、運用条件により、動作もしくは非動作となる。このため、シグナル、可変情報、遮断機、換気、照明、ポンプなどが遠隔操作可能であれば、オペレーターにとって非常に便利である。
設備は装置ごとに異なって操作 (連続的、不定期、非常に稀な状況) されるため、オペレーターにとって、個々の装置の運転間隔(時間が使われる)の情報を持つことが必要である。
監視、制御コマンドおよびデータ保存の機能は、しばしばシングルシステムにより行われる:SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition system:管制制御およびデータ収集システム)。
いくつかのSCADAシステムは世界的に利用可能であり、継続して機能改善が行われている。道路トンネルに適用されているシステムの特徴としては、たとえ同じオペレーターが所掌しているトンネルであっても、トンネルにより完全に同一というものは稀である。例えそうであっても、下記に示す構成は、一定の標準として広く普及している。
オペレーターが道路利用者と通信できることは重要である。この通信は双方向(オペレーターから道路利用者、そして、道路利用者からオペレーター)で可能であることが望まれる。これらの情報のやり取りは、全ての運用状況下(通常、縮退、緊急)において可能であることが望ましい。
このような通信機能を確保している機器は多々ある(警報は通信の特定の形態として考えられる)。これらの機器は、全て同じ機能を提供している訳ではない:道路利用者からオペレーターへ伝達することを確保するもの(非常押しボタン、特定の避難システム使用中の自動警報)もあれば、一方、他の機器はオペレーターから道路利用者に対して伝達するもの(FM周波数帯を利用した放送、拡声放送)である。一部分の機器のみ(非常電話)は双方の情報伝達が可能である。
非常電話は、トンネル内で事故を起こした道路利用者がそのトンネルを所掌している管制室に連絡をすることができる。さらに、非常電話と連動させることで、非常電話を使用することにより道路利用者の場所を特定することが可能である。
これらの非常電話は、電話ボックスの中、若しくは、緊急ステーションに一定の間隔で設置されている。非常電話の設置間隔は基準により定められているため、国により様々である。
非常電話の構造は、非常にシンプルである。トンネル内の非常電話は、トンネルからの呼び出しを受信する受信センターへ接続されている。受信センターは通常、トンネル管制室に位置し、時にはトンネルを管轄する警察の構内に設置されている。
非常押しボタンは、トンネル内で事故が発生した場合、交通管制センターへアラームを通知することができるものである。価格がそれほど高いものではないため、短い間隔で設置することが可能である。
非常押しボタンは、一定の範囲において、非常電話と重複すること、そして、さらに、道路利用者と管制センター間での双方向通信ができないため、使用頻度はあまり多くない。
上記で述べたように、道路利用者はトンネル内で様々な装置(特に緊急時には、非常電話や、時には非常押しボタン)を利用することができる。また、トンネル内には、消火設備や、多くの場合、非常口などもある。
道路利用者がこれらの装置を操作したときは、オペレーターが適切な行動を実行するため、可能な限り早急に通知されることが必要である。非常電話や非常押しボタンが設置されている場合、通常、管制室にて電話や非常情報を受信するため、これは、難しいことではない。非常電話を管制室以外の場所で受信する場合は、即座に管制室へ非常電話を受信したことを知らせるための運用手順を予め決めておく必要がある。
消火器や非常口の場合、センサーは状態変化の検出のため設置され、そして、SCADA(遠方監視制御)システムを利用することにより管制室との通信を図っている。これにより、オペレーターは、トンネル内の道路利用者が支援を求めていることが通知される。
消火器の場合、箱から消火器を取り出した、もしくは設置している緊急ステーションのドアを開けたことが通知される。非常口の場合、扉を開けたこと、または、非常口内に避難していることのどちらか若しくは両者が感知される。
トンネルが映像監視システム(交通監視制御システム参照)を装備している場合、トンネルとその周辺からの画像は管制室のモニタに表示される。オペレーターにとって、数時間の間、注意力を持続しながら複数のモニタを同時に監視することは困難である。
このような状況を是正するため、事象検出のための自動検出システムを使用するオペレーターが増えつつある。特定のトンネルに対して、システムの設置を義務付けている国もある。
自動事象検出(Automatic incident detection:AID)は、通常、トンネル内の交通流を表示するカメラから生成される映像ストリームのコンピュータによる解析に基づいている。多くのアルゴリズムは、以下に示すような事象の範囲を検出することができる。
深刻な車両火災は、通常、(事故などに伴い)車両が停止してから拡大する。車両停止に伴うAIDシステムからの警報は、温度や煙感知器のような、他のシステムに起因する警告よりも先行することが期待される。このAIDによる早期警報は、オペレーターが事象の位置や状態の確認、および、効果的な介入をする時間をもたらすことができる。この早期警報により、換気制御、二次災害の防止、事象の上流に存在する道路利用者への迅速な警報など、最適な運用方法の選択を可能とする。また、緊急隊の要請、通行規制、可変情報板やラジオによるメッセージ提供、レッカー車の呼び出し、トンネルからの避難誘導などを実施するための時間を確保することができる。
映像による煙感知システムは、 レポート05.16.B 2006の6.3.3節"現状使用される方法"に記載されている。
ビデオベースのAIDシステムは、交通流、交通量および速度のリアルタイム情報を提供することができる。このシステムは、事象を当初から録画することができ、監視制御およびデータ収集(SCADA)システムのような他のシステムと連動することが可能である。ビデオベースAIDシステムは通常、1台若しくは複数のカメラからの映像を処理するビデオイメージ処理部、インターネットプロトコル(IP)ビデオエンコーダおよびIPデコーダから構成され、モニタやコンピュータディスプレイに映像を表示する。さらに、ビデオおよび他の機能(ビデオ映像およびAID事象の録画、リアルタイム交通データを収集および蓄積、トンネルSCADAシステムのインターフェース)、ネットワーク装置および通信線路(光ファイバー、同軸およびシールドなしツィストペアケーブル)、一つ若しくは二つの冗長サーバ、映像管理システムにより構成される。
トンネル内のAIDシステムに関する設計では、以下の点に留意すべきである。
Route/Roads記事(2009) "道路トンネルにおける火災検知システム-国際研究プロジェクトから習得した知識" は、「多くのメーカーの見地として、障害物の対処に関し、検知器はトンネル内の両方向からのように異なった角度から同じ領域をカバーする2つの検知器を推奨する」と結論付けている。複数のカメラも、故障の場合を考慮し、冗長化の目的のために必要となる場合がある。典型的な映像分野の見地として、いずれかのカメラが故障した場合でも、隣接するカメラ映像により補完されるようオーバーラップするよう設計される。
レポート05.15.B 2004のIV節.2.1. “交通事故検出装置" は、自動事象検出にカメラを使用している場合、カメラ設置間隔は30~150メートル程度になると述べている。
AIDシステムのパフォーマンスの性能は、導入前の広範囲にわたる試験と調整の程度にかかっている。トンネルへの導入に関する過去の経験では、試運転と調整には数ヶ月を要することを示している。
火災/煙検知器は、通常、センサー、発報装置、伝送ケーブル、判定ユニット等により制御ループが構成され、それらを総括して一般的に火災警報システムと呼ばれる。
道路トンネルにおける火災および煙検知システムは、非常用設備の起動に遅延がないよう、可能な限り迅速に火災や煙成分を検知するように設計されている。主な目的は以下のとおりである。
火災検知の原理は、基本的に火災特有の現象を感知することに基づいている。例えば、熱、煙、輻射、そして典型的な化学物質の発生などである。従って、火災検知センサーは以下のように分類できる。
これらの検知器それぞれには、応答時間、堅牢性、信頼性などそれぞれの適用特性がある。
最近のビデオAIDシステムは、火災の検出が非常に効率的かつ高速であることが証明されている。つまり、通常想定されている交通流に一致しない任意の物体や車両といった事象を検出する。カメラは、事象の映像へ自動的に切り替わる、これにより、オペレーターは火災発生を非常に初期の段階にて発見することができる。
火災/煙検知システムは、レポート2006 05.16.B の6.3節"火災検知" にて述べられている。
一般的な方法では、道路トンネル内での火災検知は、次に示すような環境条件下でも耐え得るように設計されるべきである:最大風速10m/s、ディーゼル車排気ガスおよびタイヤと路面から生じる磨耗(粉塵)に起因する視認性低下、汚染物質(一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物)の増加および濃度変動、変化するヘッドライトの強度、エンジンの熱および車両排気ガスの熱い蒸気、電磁干渉、トンネル断面の遮蔽に影響を与える混在車両交通(例:自家用車、小型貨物、大型貨物、バス、トレーラー)。
システムは「程度の高いフェールセーフ運用を持たなければならない」、また、「可能な限り火点位置を特定しなければならない」といったようなことは十分強調されていない。従って、 誤発報を避けるような一定レベルの学習能力を保有することが火災検知システムには望まれる。なぜならば、誤発報は、それを是正するために多大な労力を必要とし、更に悪いことには、オペレーターが警報に注意を払う気を失わせるかもしれない。
さらに、火災検知/アラームの設置が廉価であること、低い運用コスト、および、保守が容易であることが不可欠である: レポート2006 05.16.B の6.3節"火災検知"参照。
自動火災検知器のためのパラメータは、国内および国際的な法令および規格により規定され、以下のようなものである:火災を検出するための最大時間、火災発生位置の決定、検出される最小火炎荷重、認可された検出方法、火災警報の設置点、自動火災警報装置が設置されるべきトンネルの詳細(例:トンネル長、機械換気を有するトンネル、人員により恒常的に監視されていないトンネル、特に交通密度の高い距離が短いトンネル)。
火災検知器のパラメータに関する詳細な参照資料のリストは、レポート2006 05.16.Bの10節"参考文献"に記述されている。
火災検知器の効率は、デバイスの種類(温度、光ビーム減衰、イオン化、等)だけでなく、検出方法、センサーの数およびトンネル内での監視レベルに基づいている。
自動事象検出、AIDシステムを含むビデオ画像解析、CCTV監視、消火器の取外しにより警報が発報する設備は、非常電話と同様、一般的に警報を発するための良い手段である。
使用される多くの検知器は、熱および温度上昇率に基づいている。このタイプは、反応速度が遅い場合が多いが、校正が適切に行われている場合、誤報は殆どない。煙の遮蔽に基づく感知器は、早期に信号を上げることができるが、ディーゼル車からの排気のため、より多くの誤発報が発生する: レポート05.05.B 1999のVI節.3.1"火災検知" 参照 。
Route/Roads記事(2009) "道路トンネルにおける火災検知システム-国際研究プロジェクトから習得した知識" は、道路トンネルの火災/煙システムについて、熱の線形検出、火炎の光学的検出、ビデオ映像による検出、吸引空気サンプリング方式による周期的な熱および煙感知について述べている。吸引空気サンプリング方式は、誤発報、維持管理および火災検知を総合的に勘案した場合、応答時間と場所の正確さに関する能力、そして火災のモニターと道路環境の影響に対して良好な性能が得られると結論づけている。この研究から得られた情報は、トンネル火災検知のための最適な技術を決定するために使うことができる。
トンネルは閉鎖かつ制限のある空間であるため、トンネル外の放送局からの電波の伝播を行うことが難しい。この伝播を再確立するため、必要な周波数を再送信するための装置を設置する必要がある。下記に示すような数種類のサービスが再送信される。
再送信することが可能な周波数のサービス数は非常に多数あるが、コストおよび実現性の問題から、それらの全てがカバーされるものではない。原則として、救助隊、オペレーターにて使用される周波数、いくつかのFMおよび(または)DABの周波数、そして、携帯電話事業者の周波数が再送信されているのを見受けることができる。
1つまたは複数の無線周波数が再送信される場合、事前録音したメッセージを挿入できるよう装置が設置されている。必要に応じ、前述のラジオ放送は中断され、そして、トンネルに関するメッセージが道路利用者への注意のために放送される。これにより、道路利用者に対してオペレーターの指示に従うための手順に関する案内を提供することができる。
トンネル内ラジオ再放送設備は基本的に下記にて構成されている。
道路利用者へ直接的に情報を提供、若しくは、特定の手法で行動を要請することができる装置はあまり存在しない。この問題を解消するため、拡声放送設備を設置しているトンネルがある。実際には、使用方法に応じて、拡声放送は様々な機能を提供する。特に以下の点を挙げることができる。
しかしながら、現状のところ拡声放送装置は広く使用されていない。使用に当たっては、ケースごとに検討する必要があり、特定のトンネル(非常に高密度の交通量、トンネル長、等)に拡声放送装置は適する。
トンネルの大部分において、自然光により道路利用者が満足する視認性を確保することはできない。従って、道路利用者に視認性と快適性を充足する状態を提供する人工的な照明を設置することが必要である。
機能の面では、照明設備は以下を満足することが必要である。
照明の設置は、いくつかの基準を尊重して設計する必要があり、特に関連するものを以下に示す。
数種類の設置方法が可能であり、最も一般的な設置方法は、対称照明とカウンタービーム照明である。トンネルの特性と定義された目的に応じて、照明器具の設置は、1列若しくは複数列、道路上、トンネル側壁上部などがある。
トンネル内の換気には2つの機能がある。
歴史的に、トンネル換気システムを設置するための第一の理由は、汚染レベルの減少であった。 交通車両による汚染物質の排出量は過去数十年にわたって劇的に減少してきているが、この機能は依然として重要であり、設計段階で細心の注意を払わなければならない。 いくつかのケースでは、走行する車両のピストン効果による自然換気により、通常運用における空気の質の要件を満たすことがある。 機械による換気システムの必要性は、トンネルの長さと道路種別(対面通行または一方通行)と条件(渋滞の可能性)を考慮して評価される: 技術レポート2004 05.14.B:道路トンネル:車両の排出量と換気のための空気の要求 を参照のこと。 本レポートは、まもなく出版される新しいレポートに置き換えられる予定である。
同様の要因が、緊急時、特に火災時の換気要件を決定する。他の機器や設備の存在(例えば非常口)も考慮する必要がある。いくつかのケースでは自然換気で十分な場合があるかもしれないが、数百メートルを越えるような長さのトンネルでは、しばしば機械換気が必要とされる。
トンネルでは、異なった換気方式が使用されることがある。 その選択は、一般的に火災時の安全性を考慮することによって必然的に導かれ、通常運用時のシステムの使用は、それに合わせて調整される。 レポート05.05.B 1999の第Ⅴ章"火災と煙制御のための換気"を参照のこと。
縦流方式は、火災に伴い燃焼車両で発生した煙のすべてを片方向に押すために、トンネルの長手方向の空気の流れを生成することである。 もし道路利用者が、煙が流れてくる下流側に存在する場合、有毒ガスと視認性の低下といった影響を受ける可能性があるので、対面通行および(または)渋滞したトンネルでこの手法を使用するときは多大な注意が必要である。 適切な煙制御のための最低風速は、設計上の火災規模とトンネルの形状(勾配、断面積)に因る。
横流方式は、火災時に発生する煙の遡上を利用する。煙は、トンネル空間の上部に蓄積する傾向があることから、煙は上部から機械的に排出されることができる。トンネル断面の下の部分に新鮮な空気の層を維持する(視認性、低毒性)ことにより自主避難を可能とするよう、システムは設計されている。 従って、煙の非成層化と過度に長手方向への広がりを避けるため、火災範囲での可能な限り低い縦流風を維持することが重要である。 この戦略はどのトンネルにも適用可能であるが、システムの設計、施工、運用はより難易度が高く、また、高価である。
換気の設計プロセスは、推力及び(または)流量に関する最小許容容量の計算、換気のネットワーク、および、適切な換気装置の選択といったものを含んでいる。レポート2006 05.16.Bの第4章:換気 、並び、その付録 12.3"ジェットファンの計算手順" 、 12.4. "煙ダンパー" および 12.6."ジェットファンの音への影響" を参照のこと。 換気設備は、火災や騒音性能に対する耐性を含め、多数の仕様を満たす必要がある。
想定される火災状況の各々に適する換気制御シナリオの設計は、プロセスの非常に重要な部分である。技術レポート2011 R02:道路トンネル:換気のための運用戦略 参照のこと。これらのシナリオは、縦流換気方式の戦略が適用されている場合は特に、単純化できる。そうでない場合は、横流換気式トンネルのように、非常に多数の計測器と換気設備を複合して取り込むこととなる。通常運用時における換気制御の最適化を図るためには、エネルギー消費を縮減することが重要である。この消費量は、トンネルの運用コストのかなりの部分を占めているので、非常に重要な課題である。
トンネルの他の要素と、換気システム設計の相互関係は多種多様である。 横流換気の場合、例えば、必要とされる換気量は掘削断面に影響を与えるかもしれないことから、建設コストに重要な影響を与える。換気システムはまた、トンネルの電力供給要件の大部分を占めている。換気システムは、火災検知、消火システムなどの他の安全設備と緊密に連携している: レポート2008 R07の第5章 "トンネル安全システムと関連する固定消火システム"参照のこと。
環境問題は換気に関連する事項である。加えて換気電力消費量と炭素の周囲への影響は、トンネル坑口や換気塔からの局所的な高濃度に汚染された空気の排出に関連している。トンネルの周囲に与える影響を減らすことは良い環境デザインの一部である:レポート2008 R04の4.3節"トンネルの空気の分散技術" 、4.6節"運用面" および 付録D."換気システム設計における分散モデルの概要"参照のこと。
最後に、トンネルの主要部分である交通空間のほかに、換気、特に非常口が必要になることがある: レポート05.16.B 2006の5.3節"避難通路設計"参照のこと。
道路トンネルにおける消火設備の主な目的は、道路利用者、緊急時対応者およびトンネルへの影響を最小限に抑えながらトンネル内の火災を消火するための手段を提供することである。
世界道路協会(PIARC)は、多数の出版物にて道路トンネルにおける火災の消火に必要なシステムを発表してきた。これは主に2つの出版物となっている: 技術レポート05.05.B 1999"道路トンネルにおける火災と煙の制御" と 技術レポート05.16.B 2007 "道路トンネルにおける火災と煙制御のためのシステム及び機器" 参照。 さらに、これらの問題は、ウィーン(1979)、シドニー(1983)、ブリュッセル(1987)、マラケシュ(2001)で開催された世界道路会議に向けた、いくつかの「委員会報告書」にて特にカバーされている。
道路トンネル内での消火活動に欠かすことができないシステムは、次のとおりである。検出装置、警報装置、無線通信、非常電話、テレビカメラ(CCTV)、拡声放送、水の供給と搬送、固定消火設備、ポータブル消火器や非常時換気。 これらのシステムは、システム間で真に互換性があること、トンネルの消火活動の安全が損なわれていないか、もしくは過剰に提供されていないかの確認を徹底的に注意深く、総合的に行った上で、計画、評価、設計および設置する必要がある。
トンネルの消火システムのこれらの要素の多くは、このマニュアルの他の章で扱われている。 他の章では、次のシステムについて述べている:検出( 火災/煙検知:火と煙の検出目的 )、固定消火設備( 固定消火システム) 、火災警報器( コミュニケーションと警報システム) 、非常電話( 非常電話 )、テレビカメラ( 監視制御およびデータ収集システム(SCADA) )、拡声放送( 拡声放送 )、無線通信( コミュニケーションと警報システム )、非常時換気( 換気 )。
本節で述べるシステムは、道路利用者(運転者)、運営機関および消防隊による道路トンネルの火災消火のために提供されるシステムに関連している。 これらは、給水管(配水管)と消火栓(ホースのバルブ)を介して水を供給するように設計されたシステムおよび道路のトンネル内での携帯用消火器の設置が含まれている。
給水本管、消火管または給水管を含む水供給システムは、(給水栓やホースのバルブを介して)トンネル内で消火用の水を提供するために必要であり、もしトンネル内に固定消火システム( 固定消火システム )が設置してある場合は、固定消火システム用の水を提供する。(参照 レポート05.05.B 1999のVI節.3.3"水の供給" )。 水は、配水システム、若しくは水槽から給水される。システムに必要とされる圧力は、消防隊が必要とする要件と一致しなければならない。
消火栓(ホースバルブ)は、消防隊が消防ホースを接続し、水供給へアクセスするための接続ポイントとして、道路トンネル内で必要とされる。 消火栓は、トンネル内に一定間隔で設置する必要がある。(参照 レポート05.05.B 1999のVI.節3.3"水の供給" )。消火栓の接続は、各自治体の消防隊(複数の場合あり)と互換性がなければならない。
ポータブル消火器は、運転者と運用管理者が消防隊の到着前に、トンネル内で発生した適度な大きさの火災を消火することができるよう、道路トンネル内に一定間隔で設置される(参照 レポート05.05.B 1999のVI.節3.2"消火器" )。
消防ホースのリールは、一部の国では道路のトンネル内に設置されているが、これは他の国々では一般的となっていない。というのは、このような国の消防隊は、各現場のトンネルに、自前のホースを持って来ることができるためである(参照 レポート05.05.B 1999のVI.節3.3"給水")
技術レポート2008 R07"道路トンネル:固定消火システムの評価" は、固定消火システム(Fixed Fire Fighting Systems:FFFS)に関する世界道路協会の見解と、その適用、選択および運用に関連する提言をまとめている。
急速に拡がる火と煙は、道路利用者の自己避難の能力を急速に損なう可能性がある。一方、急速に上昇する温度により、トンネルの維持が困難になり、かつ、安全システムを破壊する可能性がある。FFFSは火災の拡大および拡散する割合を減少させる潜在力があることから、結果として、火災時の自己避難および救助支援局面における道路利用者と緊急隊の安全を支援できる。FFFSが保有する他の潜在的な利点は、火災による損傷からトンネル構造を保護し、かつ、火災事故後のトンネル補修に伴う一時的な道路ネットワークの遮断を回避もしくは軽減できることである。
FFFSの設置に関し、国がトンネル設計ガイドラインで規定している場合を除き、設置可否の意思決定支援として、以下の手順を推奨する。
FFFSは、換気設備のような他の重要な安全システムとの関連性の中で考慮されなければならない。迅速かつ正確な事象検出とFFFSによる対応は、FFFSが保有する最大限の性能を発揮するために不可欠な要素である。 FFFSの運用性能は、維持管理、試験および訓練のための適切な体制を含め、システムエンジニアリングのアプローチを通じて評価することができる。本システムによる効果については、運用手順および維持費用も含めて慎重に検討する必要がある。
水噴霧システムは、トンネルに設置されているFFFSの中で、現状、群を抜いて最も一般的に設置されている装置である。低圧および高圧の両システムが利用されており、高圧システムは、より小さい径の水滴となる。泡消火システムを含む他の水関係システムもトンネル内に設置されている。適切なFFFSの選択は、費用便益分析に基づいていることが望ましい。
トンネルFFFSが一般的に使用されている国もあるが、世界的な道路トンネルの標準というよりは、むしろ、例外的である。このようなシステムは、火災の拡大および拡散する割合を減少させることができる一方、最適な方法でシステムが機能することを確実にするための、高い維持管理レベルおよび運用監視レベルが同様に要求される。
交通監視システムは、多くの場合、交通量が非常に多いトンネルに設置される。通常、映像監視システムが使われ、状況に応じ、車両感知器により補完されている。映像監視システムの設置により、リアルタイムでトンネル内の交通状況をオペレーターが制御することを可能にしている。障害発生時、当該事象範囲を表示するため、対応の必要性を迅速に判断できる。
映像監視はオペレーターにとって非常に有効なツールである。なぜならば、トンネル内の事象を継続的に監視できることで、必要に応じ、迅速な対応を可能とするからである。しかしながら、映像監視装置を最大限に活用するためには、管制司令室に、可能であれば常駐にて、人員の配置を維持することが必要不可欠である。
映像監視は、一般的に、その考え方としては非常にシンプルである。トンネル内に一定間隔で設置されたカメラは、トンネルとその周辺を完全にカバーする。 画像はグループ化され、トンネルの管制司令室へ専用(専用でない場合もあるが)ネットワークにより送信される。そして、その画像は受信され、ディスプレイ上に表示される。
標識は、オペレーターが道路利用者とコミュニケーションするための有効な手段の一つである。
ある道路では、トンネルの外と同じ標識をトンネル内で見ることができる。
トンネル内の道路利用者が利用可能な安全装置(非常電話、消火器、非常口…)には、さらに安全に特化した標識が必要である。
トンネルで標識が直面する根本的な問題は設置場所である。つまり、地下トンネルの幾何学的な特性として標識のために横断面を大きくすると、かなりのコスト増加につながる。現実面では、良好な視認性の必要性(従って、十分に大きいパネルが必要)と利用可能な設置スペースの間に妥協が見られる。
深刻な事象(事故、火災等)がトンネルで発生した場合、道路利用者がトンネル内に進入することを、早い段階で防止することが可能でなければならない。つまり、トンネル内への進入を効率的かつ迅速に防止する装置は、トンネルの外にいる道路利用者を、潜在的に危険な状況に曝すことを防止するものである。さらに、地下での更なる事故を防ぐことにも役立つ。
トンネルへの進入禁止が、単純に入口手前の外に配置された停止信号による手段で行われた場合、それはあまり効果的ではないという実経験が多くの国で示されている。 そのため、この停止信号は、遮断機および道路利用者へ閉鎖の理由を通知するための可変情報板と組み合わされている場合が多い。
トンネルを閉鎖する装置は監視司令室から、もしくは継続的に監視されていないトンネルでは自動で、作動させることができる。
閉鎖装置は緊急時に使用されることを意図しているが、他の状況、特に維持管理のための計画的閉鎖にも使うことができる。
トンネル建設及びトンネル設備に使用する材料は不燃で、また有害な煙を大量に発生してはいけない。加えて、火災が起きた場合、トンネルは利用者や緊急隊員がトンネルに滞在している間は崩壊することなく、重要な安全装置は少なくとも避難と消火活動が終了するまで機能しなければならない。
これらが可能かどうかは、材料が火災にどのように反応するか、またトンネル構造と設備の耐火性によって決まる。
この章は、Robin HallとC4委員会(2008〜2011)のワーキンググループ4によって執筆された。
日本語版は,大津敏郎(東日本高速道路(株))が翻訳,真下英人(国土技術政策総合研究所)が校閲,日下敦((国研)土木研究所)が変換作業を担当した.
トンネル建設に使用する材料は十分な耐火性があり、避難、消火活動の間その形を保つことが必要である。
技術レポート05.05.BのVII節."火災に対する材料の反応" 「トンネル内の火と煙の制御」にトンネル材料の特性が説明されている。材料の特性を指定する場合、火災に対する反応を含めるよう記載している。望ましい特性は以下の通り。
火災によるガスを防ぐことはできないが使用材料の選択、火災に接する時間を短縮する避難路等の安全設計により、リスクを軽減することが出来る。タイル、塗料、防水加工材など壁面覆材や照明器具の材料の特性も考慮し、これら材料の仕様に火災特性の要件を含める必要がある。
材料が燃焼中に化学的腐食または有毒物質を生成し、それらの物質が覆工コンクリート表面を浸透し、その後腐食を起こす可能性があることも考慮しなくてはならない。このことは使用される全てのコ―ティングに適用される。コンクリートはく落の危険性低減のためにポリプロピレン繊維が使用されている場合、大規模な火災により繊維が溶解し、コンクリート内の気孔が増え、中性化や塩害に対して脆弱になることから、火災後はコンクリートの耐久性を考慮しなければならない。
道路面はコンクリート又はアスファルトで舗装することが多い。 Route/Roads 記事“道路トンネル火災での車道舗装の影響” ではこれら材料の特性を、火災に対する安全性の面で説明している。コンクリートは不燃性でトンネル内での使用に問題が無い唯一の材料である。実際の火災の検証結果、また経験から、人の安全性が問題になる段階では、アスファルト舗装でも道路トンネル火災の大きさ(発熱速度、総火災負荷)が大幅に増大しないことが分かっている。漏れた燃料を路面下に貯える排水性アスファルトはトンネルには勧められない。
構造の耐火性は火災の始まりから構造の変形や崩壊により,その機能を維持できなくなるまでの経過時間によって特徴付けることが出来る。
技術レポート2007 05.16.B道路トンネルにおける火災と制御の為のシステムと機器”の第7章"耐火構造の設計基準" に、トンネルを耐火性構造とする目的を以下のようにまとめている。
補足の目的として、火災後の修復のための交通制限期間を短くする。
このテ-マの概要は、技術レポート1999 05.05.Bの第VII章.4"構造の耐火性”“トンネル内の火災と煙の制御” に記載されている。
構造物の耐火性は、異なる時間-温度曲線との関係で説明される。ISO834曲線、オランダRWS曲線、ドイツZTV曲線、とEurocode 1 Part2-2 の基本的な炭化(HC)曲線の温度に1100 分の1300の係数を乗じたフランス増加 炭化水素曲線(HCinc)を図9.2-1に示す。
図9.2-1:ISO、HCinc 、ZTV、RWSの時間-温度曲線(Routes/Roads No. 324)
"PIARC道路トンネル構造耐火設計基準" (2004年)“のthe Routes/Roads の記事でも紹介しているように、トンネル内での耐火設計基準は世界道路協会(PIARC)及び国際トンネル協会(International Tunnelling Association) の間で合意されている。そして、技術レポート2007 05.16.Bの第7章"構造の耐火基準”(PIARC勧告)として発刊されている。
提案の概要は表9.2‐2に示している。
交通方式 | 主要構造物 | 二次構造物 (4) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
沈埋トンネル上部構造の下部/内部 | 不安定地盤中のトンネル | 安定地盤中のトンネル | 開削トンネル | 換気口(5) | 避難通路出口(外気側) | 避難通路出口(他トンネル側) | 避難所(6) | |
乗用車 | ISO 60 分 |
ISO 60 分 |
ノート(2)参照 | ノート(2)参照 | ISO 60 分 |
ISO 30 分 |
ISO 60 分 |
ISO 60 分 |
貨物車両 | RWS/HCinc 120 分(1) |
RWS/HCinc 120 分(1) |
ノート(3)参照 | ノート(3)参照 | ISO 120 分 |
ISO 30 分 |
RWS/HCinc 120 分 |
RWS/HCinc 120 分(7) |
ノート
(1) 可燃物資を運ぶ大型トラックの交通密度が多い場合は180分必要となることがある。
(2) 安全性の基準値はない。また、崩壊を避けるため以外の耐火性を必要としていない。その他の目的を考慮すると以下の要件が必要になることがある。
(3) 安全基準値はない。また、進行性崩壊を避けるため以外の耐火性を必要としていない。その他の目的を考慮すると以下の要件が必要になることがある。
(4) その他二次構造物:プロジェクトごとに定義する必要がある。
(5) 横流換気の場合。
(6) 避難所は外気が入るようにする必要がある。
(7) 可燃物を輸送する大型トラックが多く、避難所から避難するのに120分以上かかる場合は時間の延長を考慮する必要がある。
崩壊がどのような影響を及ぼすかによっては耐火性の要件が異なる。影響はトンネルのタイプによって違う。沈埋トンネルの場合、一部の崩壊によりトンネル全体が浸水する恐れがあるが、開削トンネルは影響が限定的のことがある。基本的な必要条件は進行性崩壊を防止し、重要な縦断システム、つまり電力供給や通信ケーブルが切断されないことである。
トンネル構造に使用している材料は火から守るため、それぞれ違った注意が必要である。レポート1999 05.05.B “トンネル内の火災と煙の制御”のVII節.3”材料の火災反応“で岩トンネルのライン二ング 対 鉄筋コンクリートの特徴を説明している。大火災時に発生する強烈な熱により鉄筋コンクリートはその支持機能を失う可能性がある。断熱材などで保護することによって構造が早い段階で損傷することを防ぐことが出来る。工事全体(補強/プレストレスの種類や深さ、追加の保護など)としての耐火性は考える必要がある。
コンクリートの剥離は温度と膨張の違いによっておこる。補強材が容易に高温に接することになり悪影響が及ぶ可能性がある。避難するユーザーにとっては通常危険はないが、消防士などに危険が及ぶ可能性がある。さまざまな耐火性を取り入れることによってコンクリート剥離のリスクと影響を抑えることが出来る。しかし、火災では高温になるため完全に剥離を防ぐことはできない。
換気システムの耐火性は注意して設計し、故障などで設計性能が損なわれないよう考慮しなければならない。火災時にダクト付近でトンネルが崩壊する影響を検討する必要がある。
避難通路は閉じ込められた人々の脱出のため火災の第一段階でのみ使用する。避難通路が使用できる時間は最低でも30分必要である。避難経路を救助隊、消防士が使用する場合はより長い間使用できるようにすることが必要な場合もある。
火災が隣接するトンネルや避難路に広がらないよう、緊急扉、緊急避難凹部やその他二本のトンネル間にある設備はある一定時間火災に耐えられなくてはならない。枠組みも含めた緊急扉全体および緊急扉周りの構造は最低でも30分間火にさらされても耐えられる必要がある。二つのトンネルの間にある扉の場合はより長い時間、1時間から2時間は必要だ。
耐高温性に関して、トンネル内の機器やケーブルは大きく “耐火性能保有”と“保護されていない” の二つに分けられる。
耐火性のある機器やケーブルの耐火レベルは以下のとおり。
交通標識、カメラ、坑内放送用スピーカーなど保護されていない設備は通常50oCまでの運転温度があり、比較的低い温度で破損する可能性がある。
材料は次のとおり。
保護されていない設備に使用されている材料の限界温度は以下のとおりである。
機器を固定する取り付け具は火災特性を考慮する必要がある。